社員に個人目標を設定させ、人事評価を行っています。
個人個人の目標は達成しているのですが・・・会社の目標が全然達成できません。ひとことで言うと、会社の経営目標と社員の目標設定が繋がっていないことに尽きます。
会社のビジョンから適切な目標を設定し、継続的な修正確認をして初めて目標は達成されます。
2026/07/01
経営目標の設定方法|目標を達成させる7つのステップ
経営目標の設定方法|目標を達成させる7つのステップ

「今期の売上目標は10億円」
「営業利益率を5%にする」
「新規顧客を増やす」
このような経営目標を掲げたものの、社員の行動が変わらず、期末になって未達が判明する会社は少なくありません。
経営目標が達成されない大きな原因は、目標の数字が低いからでも、社員の努力が足りないからでもありません。
多くの場合、経営目標と日々の行動の間にある「達成までの道筋」が設計されていないことが原因です。
達成につながる経営目標を設定するには、次の順番で考える必要があります。
1.会社が実現したい将来像を明確にする
2.現状との差を把握する
3.経営目標を数値で設定する
4.顧客に提供する価値を決める
5.重要成功要因を絞り込む
6.KPIとOKRへ落とし込む
7.定期的に進捗を確認し、目標を修正する
この記事では、中小企業が経営目標を設定し、社員の行動へ落とし込む方法を具体的に解説します。
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目次
経営目標とは、会社が実現したい状態を具体化したもの
経営目標とは、会社が将来実現したい状態を、期限や数値を含めて具体的に表したものです。
たとえば、次のような目標があります。
・3年後に売上高10億円を達成する
・営業利益率を3%から7%へ改善する
・新規事業の売上構成比を20%にする
・特定顧客への売上依存度を30%以下にする
・社員一人当たりの粗利益を20%向上させる
ただし、売上や利益の数字を掲げるだけでは、達成につながる経営目標にはなりません。
「どの顧客に、どのような価値を提供し、どの業務を変えることで、その数字を実現するのか」まで考える必要があります。
経営理念・経営方針・経営目標の違い
経営理念、経営方針、経営目標は、それぞれ役割が異なります。
その違いはそれぞれ次のように説明されます。

理念だけでは、社員は何をすればよいか判断できません。
反対に、数字だけでは、その目標を達成する意味や優先順位が伝わりません。
理念、ビジョン、経営目標、行動目標を一つの流れとしてつなげることが重要です。
経営目標を設定しても達成できない5つの原因
経営目標を設定しても達成できない会社には、共通する原因があります。
前年実績に数字を上乗せしただけになっている、売上と利益という結果指標しか見ていない、目標が多すぎる、部門目標や社員の行動につながっていない、設定後の振り返りが行われていない——この5つです。
それぞれの原因を放置すると、どれだけ良い数字を掲げても現場は動きません。
原因の詳しい内容と、社員を責める前に見直すべき仕組みについては、こちらの記事で詳しく解説しています。
なぜ目標を達成できないのか?目標未達成が続く7つの原因と改善の仕組み
ここから先は、目標を「立てる段階」で達成につながる形にするための具体的な手順を解説します。
達成につながる経営目標を設定する7つのステップ
ここからは、経営目標を設定する具体的な手順を説明します。

ステップ1.経営理念と将来ビジョンを確認する
最初に確認するのは数字ではありません。
「自社は、誰に、どのような価値を提供する会社なのか」
「3年後や5年後に、どのような会社になりたいのか」
を明確にします。
たとえば、単に「売上10億円を目指す」と考えるのではなく、次のように将来像を描きます。
地域の製造業から、技術課題を最初に相談される会社になる。
価格競争から脱却し、高付加価値案件を中心とする事業構造へ転換する。
この将来像があることで、売上目標の意味と、選ぶべき戦略が明確になります。
ステップ2.外部環境と自社の現状を分析する
次に、目指す姿と現在地の差を確認します。
外部環境では、次のような項目を調べます。
・市場の将来性はどうか?
・顧客ニーズはどう変化しているか
・競合は何を強みにしているか
・技術や制度はどう変わるか
・原材料費や人件費はどう変化するか
自社については、まず財務分析で自社の財務の現状を分析します。
そのうえで、なぜその結果になっているか、次の項目を確認します。
・顧客別・商品別の売上と粗利益
・顧客から選ばれている理由
・競合と比較した強みと弱み
・人材と組織能力
・生産能力と業務プロセス
ただ強みや弱みを並べるだけで終わらせず、「どの課題を解決すれば、将来像に近づけるか」まで考えることが重要です。
ステップ3.3~5年後の財務目標を数値化する
将来像と現状との差が分かったら、3~5年後の財務目標を設定します。
代表的な財務目標として、売上高増加・市場占有率などの成長性に関する目標、粗利益率や営業利益率などの収益性に関する目標、自己資本比率や債務償還年数など財務安定性に関する目標、在庫回転期間や売掛金回収期間などの資産効率に関する目標があります。
売上が伸びても、在庫や売掛金が増え続ければ、資金繰りが苦しくなることがあるためです。
将来像を実現するための自社の課題を分析して目標を設定しましょう。
ステップ4.顧客に提供する独自の価値を決める
経営目標を達成するには、顧客から選ばれる理由が必要です。
ここでは、次の3点を明確にします。
1.誰を主要顧客とするのか
2.顧客のどのような課題を解決するのか
3.競合とは異なる価値をどう提供するのか
経営学の教科書などでよく取り上げられる事例に、サウスウエスト航空があります。
サウスウエスト航空は、短・中距離を移動する顧客に対し、低運賃、定刻運航、多便数という価値を提供し、LCC(格安航空会社)の先駆けとして40年以上の連続黒字という驚異的な実績をあげました。
その実現を支えたのが、使用機材の統一、短い折り返し時間、機内サービスの簡素化など、相互につながった複数の活動です。
機材の統一という一つの施策が、整備費や訓練費の削減だけでなく、折り返し時間の短縮や機材稼働率の向上にも貢献しています。
良い戦略は、一つの施策だけに依存していません。
複数の施策が組み合わさり、顧客価値、低コスト化、資産の有効活用へ同時に貢献します。
自社でも、単に「品質を高める」「営業を強化する」と考えるのではなく、複数の活動がどのようにつながるかを考える必要があります。
ステップ5.戦略マップで達成までの因果関係を描く
経営目標と具体的な活動をつなぐために有効なのが、BSCの戦略マップです。
戦略マップでは、目標を次の4つの視点に分けます。

たとえば、製造業が営業利益率を改善する場合は、次のような因果関係を描けます。
提案力を持つ技術者を育成する
↓
顧客課題を把握する提案プロセスを確立する
↓
高付加価値案件の受注比率が高まる
↓
平均単価と粗利益率が上がる
このつながりが、戦略の仮説です。
戦略マップを作る目的は、きれいな図を作ることではありません。
「本当にこの取り組みを進めれば、経営目標へ近づくのか」を確認することです。
ステップ6.CSF、KPI、OKRへ落とし込む
戦略マップができたら、重要成功要因と測定指標を設定します。
CSFとは
CSFは、経営目標を達成するために、特に成功させなければならない重要な要因です。
先ほどの製造業の例では、次のようなものが考えられます。
・高付加価値商品の開発
・見積もり精度の向上
・不採算案件の削減
・生産リードタイムの短縮
すべての業務をCSFにしてはいけません。
戦略の成否を左右する、少数の重要項目に絞ります。
経営資源が限られる中小企業は、CSFを描きにくいことがあります。
そんなとき、私は財務分析から重要成功要因を逆算するというステップを挟みます。
ステップ2の財務分析と、ステップ3の財務目標のギャップのうち、最も改善余地が大きい項目を1~2選び、それを解消するCSFを経営者と一緒にAIも活用しながら考えます。
KPIとは
KPIは、CSFが計画どおり進んでいるかを確認するための指標です。

KPIは、測れる数字を選ぶだけでは不十分です。
社員の行動によって変えられ、変化した結果として経営目標へ近づく指標を選びます。
OKRとは
OKRは、組織が実現したい状態を表すObjectiveと、その達成度を測るKey Resultsを組み合わせる目標設定方法です。
たとえば、次のように設定します。
Objective
価格競争から脱却し、顧客から技術提案を求められる会社になる
Key Results
・受注生産品の売上構成比を30%から45%へ高める
・技術提案型の商談件数を月5件から月10件へ増やす
・半年以内に新商品の試作品を重点顧客5社へ提案する

経営目標が最終的な成果を示すのに対し、OKRは、一定期間に組織が集中する変化を明確にするために使います。
会社の経営目標と、部門・チームのOKRをつなげることで、社員が「自分たちは何に集中するのか」を理解しやすくなります。
OKRについて詳しくは以下の記事でも説明しています。
ステップ7.週次・月次・四半期で進捗を確認し、目標を修正する
経営目標は、設定して終わりではありません。
週次・月次ではKPIと行動の進捗を確認し、四半期では戦略の仮説や目標の設定そのものを振り返ります。
週次で確認すること
毎週、先週行ったことの振り返りと今週優先することを宣言し、チームで共有します。
リーダーは、メンバーの目標を評価し、必要がある場合はフィードバックや支援を行います。
月次で確認すること
目標を達成するために、簡単に解決できないことなどについて対話をし、より質の高い行動を引き出すための会議をチームで行います。
チームの中だけで解決できない内容は、上層部の会議に引き継ぎます。
四半期で確認すること
四半期改善ミーティングを行い、四半期で立てた目標と、結果とのギャップを明らかにし、必要がある場合は目標を修正します。
また、チームの運用面についても話し合い、改善できる点を改善します。
これらのミーティングで、未達だった社員や部門を責める場にすると、正確な報告が上がらなくなります。
レビューの目的は、責任追及ではありません。
目標と行動の因果関係を検証し、次の打ち手を改善することです。
経営目標の設定に使えるSMARTの法則
経営目標を文章にするときは、SMARTの考え方で確認できます。

たとえば、「利益を増やす」という目標は曖昧です。
SMARTを使うと、次のように具体化できます。
2029年3月期までに、高付加価値商品の売上構成比を高め、営業利益率を現在の3%から7%へ改善する。
ただし、SMARTは目標の表現を整えるための確認方法です。
SMARTを満たしていても、戦略との因果関係がなければ、達成方法は分かりません。
「具体的な目標を作ること」と「達成できる戦略を作ること」は分けて考える必要があります。
なお、経営を大きく変える必要がある場合は、SMARTのAは達成可能か(Attainable)ではなく、60~70%達成で十分な、野心的な目標(Ambitious)なものにするのが適切だと考えています。
変化が速く・不確実性が高い現代の経営環境において、現状の延長線上にある、達成可能性の高い目標ばかりでは、生き残っていくことはできません。
新規事業や新事業の開拓など、大きなチャレンジをすることが重要です。
経営目標を設定するときの5つの注意点
数字だけの目標になっている
経営目標は数字で表しますが、目標数字と現状とのギャップを埋める戦略が合っていないと目標は達成できません。
支援現場で目標設定の支援をしていると、例えば売上依存度が高い製造業では経営者が「新規顧客比率20%」のような目標を掲げるケースが多いでが、その目標を達成するには、CSFに「現場での提案型営業の確立」が設定されます。
こういった目標設定が散見されます。
目標数値を達成できる戦略は整合性があるのか?
具体的に何に取組むのか?
誰が、いつまでに、達成する責任があるか?
ここまで設定しないと、目標は達成されません。
KPIを増やしすぎない
経営目標達成のためにとKPIを増やしすぎると、優先順位が分からなくなり、労多くして成果があがりません。
KPIにすべき項目が多い場合は、経営目標の達成を左右するものに絞ったうえで、まず最初の3カ月どのKPIを達成すべきかの優先順位を決めましょう。
部門ごとに別々の目標を作らない
営業、製造、開発、管理などの各部門が、それぞれ独立した目標を作ると部分最適が起こります。
営業が短納期案件を大量に受注した結果、製造の残業と不良が増えることもあります。
会社全体の経営目標と戦略マップを共有したうえで、部門目標を設定し,共有します。
会社目標は、部門目標の全部が達成したときに、達成されます。
そのような部門目標になっていない場合は、部門目標を修正しましょう。
必達目標と挑戦目標を混同しない
資金繰りや最低利益など、必ず達成しなければならない目標があります。
一方で、新商品開発や事業変革など、不確実性の高い挑戦目標もあります。
両者を同じ基準で評価すると、社員は失敗を避けて低い目標を設定するようになります。
必達目標と挑戦目標は、目的と運用方法を分ける必要があります。
人事評価と目標管理を安易に一体化しない
目標の達成率をそのまま人事評価にすると、社員は達成しやすい目標を選ぶ可能性があります。
また、部門間の協力よりも、自分の数字を優先することがあります。
そうしてしまうと、結果的に「部門ごとに別々の目標」が作られてしまいます。
経営目標を実現するための目標管理と、社員の処遇を決める人事評価は、役割を整理して設計することが重要です。
経営目標設定チェックリスト
経営目標を決定する前に、次の項目を確認してください。
・経営理念やビジョンとつながっているか
・ターゲットや顧客と、顧客へ提供する価値が明確か
・現状値と目標値の差を把握しているか
・目標値の根拠を説明できるか
・達成期限が決まっているか
・達成に必要なCSFが絞られているか
・KPIが社員の行動とつながっているか
・部門間の目標に矛盾がないか
・定期的に戦略を見直す場があるか
チェックが多く付かない場合は、経営目標を発表する前に、達成までの道筋を見直す必要があります。
まとめ|経営目標は「数字」ではなく「達成の仕組み」まで設定する
経営目標の設定で重要なのは、売上や利益の数字を決めることだけではありません。
達成につながる経営目標は、次の流れで設定します。
1.経営理念と将来ビジョンを明確にする
2.外部環境と自社の現状を分析する
3.3~5年後の経営目標を数値化する
4.ターゲット顧客と提供価値を決める
5.戦略マップで因果関係を描く
6.CSF、KPI、OKRへ落とし込む
7.月次・四半期で検証と修正を続ける
経営目標は、経営者だけが知るべき数字ではありません。
社員が「何を優先し、何を変えれば会社の目標に貢献できるのか」を判断するための共通言語です。
経営目標を達成したいのであれば、目標値だけでなく、戦略、指標、行動、レビューまでを一つの仕組みとして設計することが重要です。
よくある質問
経営目標は何年先まで設定すればよいですか?
中長期の方向性は3~5年、具体的な実行目標は1年、重点的な取り組みは四半期単位で設定するのが一つの方法です。
将来の不確実性が高いため、長期になるほど細かな行動まで固定せず、方向性と到達したい状態を中心に設定します。
KPIはいくつ設定すればよいですか?
一律の正解はありませんが、経営会議で継続的に確認できる数に絞ることが重要です。
測れる数字をすべて管理するのではなく、経営目標の達成を左右する指標を選びます。
経営目標を社員へ浸透させるにはどうすればよいですか?
経営目標の数字だけでなく、設定した背景、顧客へ提供する価値、達成までの因果関係を説明します。
そのうえで、会社目標を部門やチームの目標へ展開し、定期的に進捗を共有する仕組みが必要です。
経営目標が未達になった場合は変更してもよいですか?
前提条件が変化した場合や、戦略の仮説が誤っていた場合は見直すべきです。
ただし、達成が難しいという理由だけで安易に下げるのではなく、未達の原因が行動不足なのか、指標の誤りなのか、戦略の誤りなのかを確認してから判断します。
経営目標の設定を専門家へ相談する判断基準はありますか?
経営目標の数値は決められても、戦略、部門目標、KPI、行動計画へ落とし込めない場合は、外部支援を検討する余地があります。
経営者と幹部で目標への認識が異なる場合や、毎年同じ目標を掲げながら未達が続いている場合も、設定過程を見直す必要があります。
経営目標を「社員が動ける目標」へ変えませんか?
経営目標の設定で本当に難しいのは、
目標の数字を決めることではありません。
会社のビジョンから戦略を組み立て、
部門と社員が動ける目標へ落とし込むことです。
経営計画がまだない場合は計画作成から、
すでに計画がある場合はOKRへの展開から、
会社の状況に合わせて整理します。
経営目標の設定についての相談については下記よりお問い合わせください。
記事作成者
山内聖堂
2011年の税理士登録後、事業計画策定支援コンサルティングを開始するも、事業計画を達成できない企業があるジレンマに悩み、組織開発コンサルティングへと軸足を移す。
近年では、組織の共通の目標に向かって、従業員がそれぞれの強みを活かして働く「しくみ」であるOKRの導入コンサルティングに力を注いでいる。
現在1on1マネジメントスクール内で、経営者・経営コンサルタント向けにOKR講師養成塾の講師を行っている。
https://1on1cs.jp/course/#okr
タグ: 中小企業 目標管理





