お陰様で事業が拡大し、社員が増えたのですが、指示待ち社員が多くて、どんどん私が忙しくなってしまいました。
どうすればよいのでしょうか?社長から見て社員が指示待ちな場合、多くは「社員がどう動けば正解か分からない」ことが原因です。
場当たり的な指示をだすのではなく、そこを整えるのが、社長の仕事ですよ。
社員ではなく、会社側に課題があるということですか?
そうです。
詳しく見ていきましょう。
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2026/10/21
お陰様で事業が拡大し、社員が増えたのですが、指示待ち社員が多くて、どんどん私が忙しくなってしまいました。
どうすればよいのでしょうか?
社長から見て社員が指示待ちな場合、多くは「社員がどう動けば正解か分からない」ことが原因です。
場当たり的な指示をだすのではなく、そこを整えるのが、社長の仕事ですよ。
社員ではなく、会社側に課題があるということですか?
そうです。
詳しく見ていきましょう。
「もう少し、自分で考えて動いてほしいんだけどな……」
指示した仕事はきちんとやってくれる。でも、その先は自分で考えようとせず、問題が起きるとすぐ社長に判断を求めてくる。
そんなもどかしさを感じたことはありませんか?
社員さんが自分から動かないのは、やる気がないからとは限りません。
「何を目指し、何を優先し、どこまで自分で判断してよいのか」が見えていないことが、大きな原因になっている場合があります。
私は経営計画とOKRの導入を支援しています。
支援先の社長から「利益が増えたこと以上に、社員がビジョンに向かって自分から動くようになったことがうれしい」と言っていただいたことがあります。
この記事では、社員が自分で考えて動かない5つの原因と、社長が今日から見直せる目標の伝え方・任せ方をご紹介します。
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この章では、なぜ社員個人ではなく会社の仕組みに目を向けるべきなのかを説明します。
たとえば富士山に登るとき、どのコースを選ぶかは目的によって変わります。
山頂でご来光を見たいなら山小屋に一泊する。景色と写真を楽しみたいなら五合目まで行く。
一方、目的を知らされないまま「富士山に行くぞ」とだけ言われたらどうでしょう。
多くの人は、自分でコースを決められず、リーダーの後ろについて歩くはずです。
職場も同じです。
会社の目標や評価の基準が見えなければ、社員にとって一番安全なのは「言われたことを、言われたとおりにやる」ことです。
つまり指示待ちは、怠けているのではなく、不確かな状況で失敗を避けるための自然な反応である場合が多いのです。
Googleは、社内の180チームを調べた研究「プロジェクト・アリストテレス」で、成果を出すチームの特徴を分析しました。その結果、チームに誰がいるかよりも、チームがどう協力しているかが重要だと報告しています
(出典:Google re:Work 2015年初出・2026年3月更新・日本語版2026年10月19日確認)。
同じ資料では、重要な要素として「心理的安全性」「相互信頼」「構造と明確さ」「仕事の意味」「インパクト」の5つが挙げられています。「構造と明確さ」には、期待される役割や目標が分かっていることが含まれます。
もちろん、これは大企業Googleでの調査結果です。中小企業にそのまま当てはまるとは限りません。
それでも、「目標が明確で、安心して挑戦できる環境」が成果に関わるという視点は、中小企業の組織づくりでも参考になります。
社員が指示待ちになる原因は一つではありません。本人の知識や経験、意欲に課題がある場合もありますが、ここでは社長が見直せる組織側の5つの原因に絞って確認します。
図1作成
| 原因 | 社員の心の声 | 社長が確認すべきこと |
|---|---|---|
| ① 目指す姿が分からない | 「会社はどこへ向かっているの?」 | ビジョンや目標が社員に伝わっているか |
| ② 優先順位が分からない | 「結局、何が一番大事なの?」 | 今、自分が取り組む最も重要な目標は何か |
| ③ 成功の基準が分からない | 「どこまでやれば評価されるの?」 | 期待する成果が数字や状態で示されているか |
| ④ 判断の範囲が分からない | 「勝手に決めて、間違ったら困る」 | 任せる権限と責任が明確か |
| ⑤ 失敗が怖い | 「怒られるくらいなら、指示を待とう」 | 提案や挑戦を受け止める場があるか |
社長は、3年後にどんな会社にしたいか、どんなお客様に選ばれたいかを日頃から考えています。
でも、その思いは社員さんにどのくらい伝わっているでしょうか?
たとえば社長は「価格だけでなく、提案力で選ばれる会社にしたい」と考えているとします。
それを知らない社員さんは、依頼された仕事を早く終わらせることだけを重視するかもしれません。
これでは、社長と社員さんで仕事の優先順位がずれてしまいます。
中小企業庁の2025年版中小企業白書では、従業員への経営理念・ビジョンの共有に取り組んでいる企業のほうが、取り組んでいない企業よりも事業規模を拡大した割合が高いと示されています(出典:中小企業庁「2025年版中小企業白書」第2部第2章第2節)。
因果関係までは言い切れませんが、方向性を共有する大切さを示すデータです。
「売上を増やそう」
「品質も上げよう」
「コストも削減しよう」。
どれも大切ですが、限られた時間の中で何を優先すべきか分からなければ、社員さんは迷います。
このとき社員さんが指示を待つのは、前述のとおり、迷ったときの自然な反応です
大切なのは「全部大事」ではなく、「今は何が最も大事か」を示し、社員自身の目標に落とし込むことです。
「お客様を大切にしよう」という方針は大切です。ただ、それが問い合わせへの返信を早くすることなのか、困りごとを聞いて改善案を出すことなのかは、人によって解釈が違います。
期待される成果が分からなければ、社員さんは自分の行動が正しいか判断できません。
これは、前述のGoogleの研究で「構造と明確さ」と呼ばれていた要素にあたります。
たとえば、お客様から納期の変更を相談されたとします。自分で変更してよいのか、上司の承認が必要なのかを知らなければ、社員は判断を保留するでしょう。
社長から指示待ちに見えても、本人は会社のルールを守ろうとしているだけかもしれません。
前述の白書では、売上高10億円未満の企業が成長するうえでの壁として、経営者一人で経営することの限界を挙げています。
そのうえで、経営者に集中しがちな職務権限を委譲する必要性を指摘しています(出典:同上)。
以前、自分で考えて進めた仕事を厳しく叱られた経験があると、社員さんは「余計なことをしないほうが安全だ」と学びます。
前述のGoogleの研究では、ミスを認めたり質問したりしても責められないと感じられる「心理的安全性」が、効果的なチームの要素の筆頭に挙げられています。
ミスを責めるのではなく、間違いに至った判断について一緒に振り返り、次の行動基準を育てることが、主体性を育てます。
5つの原因は、「目標が見えない(①②③)」「「行動に移せない(④⑤)」の2つに分けられます。
①〜③は、目標の見せ方に不備があり、④⑤は、任せ方に不備があります。
今、何が整備できていないかを整理し、対策を行いましょう。
[図4:5つの原因と2つの対策 ※図表制作指示を参照]
| 原因 | 対策 | |
|---|---|---|
| ① 方向性・② 優先順位 | 最も重要な目標を絞る | |
| ③ 成功基準 | 「何ができたら成功か」を具体的にする | |
| ①〜③ 共通 | 社員の仕事と目標のつながりを示す | |
| ④ 判断権限 | 任せる仕事と判断権限を決める | |
| ⑤ 失敗への不安 | 過程を振り返る/答えを先に出さない |
いきなり人事制度を変えたり、大がかりな組織改革を始めたりする必要はありません。まずは、会社の目標と社員さんの仕事をつなぐ3つのことから始めてみてください。
図2|社員が自分で動くための3ステップ
最初に、会社として今、何に集中すべきかを決めます。
たとえば「既存顧客からの信頼を高める」「新しいお客様との取引を増やす」といった目標です。
目標は3~5個に絞ることをお勧めします。
大切なのは、社員さんが迷ったときに何を優先すべきか判断できる状態にすることです。
社長自身が優先順位を決めきれていない場合は、まず今期の最重要課題を整理するところから始めましょう。
目標を決めたら、次は成功の基準を決めます。「既存顧客からの信頼を高める」だけでは、まだ抽象的です。
具体的かつ測定可能な目標を設定しましょう。
以下は、一般的な中小企業を想定した例です。
数値は説明用の仮の設定です。
目標:既存顧客からの信頼を高める
成功の基準1:主要顧客へのヒアリングを50件実施する
成功の基準2:見つかった不満のうち重要な3項目の改善基準を定め、改善行動を行う
成功の基準3:既存顧客からの粗利を前年より5%増やす
行動の指標だけでなく、粗利のような財務の指標を1つ入れると、取り組みが会社の業績につながっているかを確かめやすくなります。
ただし、手順まで細かく指定しすぎないことが大切です。
何を実現してほしいかは明確にし、方法は社員さん自身が考える余地を残します。
目標が決まったら、それを社員さん自身の仕事に結びつけます。
たとえば「今期はお客様からの信頼を高めたいんだけど、あなたの仕事ではどんなことができそうかな?」と聞いてみてください。
すぐに答えが出なくても、社長や上司が先に答えを教えず、考えを聞くことが大切です。
営業担当なら納品後のお客様の声を聞くこと、製造担当なら不良品の原因を減らすことを考えるかもしれません。
その測定可能な目標値を一緒に考え、いつまでにやるかを合意をし、社員の具体的な目標にしましょう。
こうして、会社の目標と自分の仕事の間に線がつながっていきます。
[図3:指示する会話と、考えてもらう会話の違い]
| 社長(上司)の言葉 | 社員さんの受け止め方 | |
|---|---|---|
| Before | 「もっと自分で考えて動いてほしい」 | 何を考えればよいのか分からない |
| After | 「今一番大切なのは、既存のお客様にもっと満足してもらうことなんだ。あなたなら、どんな改善ができそう?」 | 目的が分かり、自分で方法を考えるきっかけになる |
明日の朝礼や次のミーティングで、一つだけでも試してみてはいかがでしょうか。
会社の目標が明確になっても、社員さんが必ず自律的に動くわけではありません。
実際に行動するには、判断できる権限や必要な情報、困ったときに相談できる関係も必要です。
ここでは原因④⑤への対策をご紹介します。
仕事を任せるときは、「何を実現してほしいのか」「どこまで自分で判断してよいのか」「どんな場合に相談してほしいのか」の3点を伝えます。
たとえば「通常の納期変更は担当者が判断してよい。ただし、追加費用が発生する場合は上司に相談する」といったルールです。
判断の範囲が明確になれば、社員さんは自分で決めやすくなります。
ただし、権限に見合う知識や経験がまだ足りない場合は、教育や上司のサポートもあわせて用意しましょう。
社員さんが自分で考えて行動しても、期待した成果が出ないことはあります。そんなときは結果だけでなく、その行動を選んだ理由を聞いてみてください。
「どうしてその方法を選んだの?」
「実際にやってみて、何が分かった?」
「次は何を変えたらよさそう?」
振り返りは、目標を立てることと同じくらい重要です。
前述の白書でも、規模の小さい企業ほど、経営計画に対する実績の評価や見直しを行っている割合が低いことが示されています(出典:中小企業庁「2025年版中小企業白書」第2部第2章第2節)。
白書のデータは会社全体の計画についてのものですが、私は、社員一人ひとりの目標でも同じことがいえると考えています。
目標を立てて終わりにせず、定期的に振り返ることで、社員が自分で動けるような成長を支援します。
経験が豊富な上司ほど、問題を聞いた瞬間に解決方法が浮かぶものです。
その場で答えを教えれば仕事は早く進みますが、部下が考える機会は減ってしまいます。
緊急性の低い問題なら、答えを伝える前に「あなたはどうしたらよいと思う?」と聞いてみてください。
もちろん、重大な事故や法令違反につながる問題は、社長や上司がすぐに判断する必要があります。
社員さんの成長につながる場面を選んで、考える機会をつくることが大切です。
上司がそういう振舞いができるようになるために、社長が率先して「あなたはどうしたらよいと思う?」と聞くようにしてください。
「どうしてその方法を選んだの?」と聞くことも、答えを先に出さないことも、思いついたときだけでは定着しにくいものです。
聞き方にも慣れが必要です。
上司と部下が定期的に対話し、仕事の経験から学びを引き出す仕組みが「1on1」です。
続けるうちに、上司が部下の考えを引き出す力も育っていきます。
中小企業で1on1を効果的に進める手順や、つまずきやすいポイントをまとめていますので、あわせてご覧ください。
社員さんが自分で判断できる仕事が増えると、社長への相談や承認の集中を減らせる可能性があります。
そうなると、社長は、将来の戦略や新規事業、採用・投資といった本来の経営の仕事に時間を使えるようになります。
2025年版中小企業白書は、権限委譲を進めた企業で自律的な社員や改善提案が増え、売上高の増加につながった可能性に触れています(出典:同上)。
ただし、権限委譲をすれば売上が増えると保証するものではありません。
冒頭でお伝えしたように、私がOKRの導入を支援したお客様からは、利益の向上以上に、社員さんが会社のビジョンに向かって自律的に動くようになったことを喜んでいただきました。
経営者にとって利益はもちろん大切です。
それと同じくらい、「社員が会社の将来を自分事として考えてくれること」に価値を感じる社長もいるのだと、強く印象に残っています。
※ここで紹介した内容は、著者自身の支援経験に基づく見解です。すべての企業で同様の変化が生じることを示すものではありません。
ここまでの考え方を、組織として続けていく方法の一つが「OKR」です。

OKRは「Objectives and Key Results(目標と主要な結果)」の略です。
簡単にいえば、何を実現したいかという目標と、何ができたら実現したといえるかという成果をセットで考える方法です。
たとえば会社の目標が「お客様から選ばれ続ける会社になる」なら、営業部門は顧客満足度の改善、製造部門は品質向上といった目標を立てます。
それぞれの成果を確かめながら定期的に見直すことで、会社の目標と部門・社員の仕事のつながりを共有しやすくなります。
ただし、OKRは社員を細かく管理するための道具ではありません。会社の方向性を共有し、社員が自分たちの貢献を考えるための仕組みとして使うことが大切です。
[図3:全社目標と社員の行動をつなぐOKR]
最初から複雑な仕組みを入れる必要はありません。
まず経営者と幹部で会社として何を実現したいかを確認し、今期の重要な目標を絞ります。
そのうえで部門やチームの取り組みを決め、定期的に成果と課題を共有します。
経営計画がすでにある会社なら、その計画を活かしてOKRを設定できます。
一方、会社の目標や戦略そのものが曖昧な場合は、先に経営計画を整理したほうがよいでしょう。
私たちの中小企業向け経営計画策定支援では、3年後の財務目標と戦略を整理し、1年間の全社OKRにつなげます。
その後の部門・社員への落とし込みは、OKR導入コンサルティングで支援しています。
社員さんが自分から動かないとき、つい「もっと主体性を持ってほしい」と考えてしまいます。
でも社員さんの立場からは、何を目指せばよいか、どこまで判断してよいかが分からず、動けないこともあります。
まずは、次の3つを確認してみてください。
1.会社として今、一番重要なことは何か。
2.何ができたら成功なのか。
3.社員さんは、自分の仕事と会社の目標のつながりを理解しているか。
4.任せる範囲と、考えた過程を振り返る場を用意しているか。
「もっと自分で考えて動いてほしい」と感じたら、「自分で考えるための目標と判断基準を伝えているだろうか」と問い直すところから始めてみてはいかがでしょうか。
社長の考えを、社員が実行する目標へ。
会社のビジョンや戦略はある。でも、社員さんの日々の行動につながっていない。そんなときは、経営計画とOKRを組み合わせた組織づくりも一つの方法です。
山内経営会計事務所では、経営計画の策定から社員が実行する仕組みづくりまでを支援しています。
計画づくりから始めたい会社も、すでに計画がありOKRの導入から始めたい会社も、まずは無料相談でお気軽にご相談ください。

Q1. 指示待ちの社員に「自分で考えて」と伝えるのは逆効果ですか?
逆効果とは限りませんが、それだけでは行動につながりにくい場合があります。
何を実現してほしいのか、何を自分で判断してよいのかを先に共有したうえで、社員自身の考えを聞くことが大切です。
Q2. 社員に主体性がないと感じたら、最初に何を見直すべきですか?
会社の優先目標と、社員が自分で判断できる範囲を見直しましょう。
社員が会社の方向性を理解しているか、何を成功とするかを把握しているかが、最初の確認点です。
Q3. 会社の目標を共有しても社員が動かないのはなぜですか?
目標だけでは、具体的な行動や判断の仕方が分からない場合があるためです。
成功の基準、判断権限、必要な知識、定期的な振り返りもあわせて確認する必要があります。
Q4. 社員が自分から動くようになるまで、どのくらいかかりますか?
一律の期間は決められず、社員の経験や会社の状況によって異なります。
まずは数週間から1か月単位で取り組みを振り返り、行動や判断の変化を確認する方法が考えられます。
Q5. 小さな会社でもOKRは導入できますか?
導入できます。会社の重点目標を共有し、チームで成果を確認するところから始められます。
会社の規模に合わせて、運用を簡素にすることが大切です。
Q6. 経営計画づくりやOKR導入の支援には、どのくらいの費用がかかりますか?
料金は、参加人数、開催方法、個別開催の有無などによって異なります。
具体的な費用は、実施方法とあわせてお問い合わせ時にご案内しています。
Q7. 専門家に相談したほうがよいのは、どのような場合ですか?
目標の共有や権限委譲を進めても改善せず、社長への判断の集中や部門間の連携不足が続く場合は、相談を検討する目安です。
組織全体の仕組みを第三者の視点で見直すことが役立つ可能性があります。
山内聖堂(山内経営会計事務所/Small-OKR LLC 代表)
税理士/OKRコンサルタント。税理士開業以来、補助金申請・事業計画策定・中長期経営計画など、財務と経営のコンサルティングを提供。
中小企業向けの経営計画の策定から、OKRを活用した目標達成の仕組みづくりまでを一貫して支援している。