どんぶり勘定から脱却するには?経営者が最初に見るべき3つの数字
どんぶり勘定から脱却するために、最初に抑える3つの数字
「売上は増えているのに、なぜかお金が残らない」
「社員を採用したいが、本当に人件費を払えるのか不安だ」
「設備投資をしたいが、いくらまで借りても大丈夫なのか分からない」
このような悩みを抱えながら、通帳の残高や前年の売上を見て、経営判断をしていないでしょうか。
どんぶり勘定から脱却するというと、細かな経費を管理したり、難しい決算書を読んだりすることだと思われがちです。
しかし、本当の目的は数字に詳しくなることではありません。
採用、値上げ、設備投資、借入といった重要な場面で、根拠を持って経営判断できる状態をつくることです。
そのために経営者が最初に確認したいのが、次の3つの数字です。
1.1人当たり売上高
2.粗利益
3.債務償還年数
この3つを見ると、会社の「売上を生み出す力」「利益を残す力」「未来へ投資する力」を整理できます。
本記事では、3つの数字の意味と、経営判断への使い方を分かりやすく解説します。
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どんぶり勘定から脱却する目的は、根拠を持って経営判断すること
どんぶり勘定とは、会社の収支や利益を正確に把握せず、感覚や大まかな数字だけで経営判断を行っている状態です。
帳簿が作られていない会社が、どんぶり勘定なのではありません。
毎月試算表を作っていても、数字を経営判断に使っていなければ、実質的にはどんぶり勘定と変わらないと言えます。
例えば、次のような状態です。
・売上高だけ見て採用を決めている
・売上が増えたのにお金が残らない
・金融機関に借入を断れら困っている
・粗利益を確認せず、売上だけを追いかけている
・数字が悪いと社員に「もっと売れ」と伝えている
これらに共通しているのは、経営判断の根拠が不足していることです。
経営者が本当に知りたいのは、決算書の読み方ではなく、
・社員を採用してもよいか
・給料を上げてもよいか
・商品を値上げすべきか
・新しい設備を購入してもよいか
・追加で借入できるか
こうした判断を、感覚ではなく、根拠を持って行いたいのです。。
どんぶり勘定から脱却する目的は、すべての数字を把握することではありません。
経営に必要な数字を絞り、重要な判断に使えるようにすることです。
根拠を持って経営判断するために見るべき3つの数字
経営者が確認できる数字は、決算書や試算表の中に数多くあります。
しかし、最初からすべての数字を理解する必要はありません。
まずは、次の3つを確認します。

3つの数字は、それぞれ独立しているわけではありません。
1人当たり売上高によって、会社全体の売上が生まれます。
その売上から原価を引くと、粗利益が残ります。
さらに、粗利益から人件費やその他の経費を支払い、利益と返済原資をつくります。
その返済原資と借入残高を比較することで、今後の投資余力を考えられます。
つまり、次の順番です。
売上を生み出す力
↓
利益を残す力
↓
未来へ投資する力
この流れを理解することが、どんぶり勘定から脱却する第一歩です。
1人当たり売上高が低い原因は、社員の営業力の問題か
1人当たり売上高とは
1人当たり売上高は、次の計算式で計算します。
1人当たり売上高=年間売上高÷従業員数
分かりやすく説明すると、
会社で働く人1人が、平均してどれくらい売上をつくっているかを見る数字です。
例えば、年間売上高が2億円で、従業員が20人いる会社の場合、1人当たり売上高は1,000万円です。
ただし、この1,000万円という数字だけを見ても、良いか悪いかは判断できません。
重要なのは、同業他社と比較することです。
同業他社と比べて、社員の売る力は十分か
1人当たり売上高を見る目的は、同業他社と比べて、社員の売る力が十分かを確認することです。
例えば、自社の1人当たり売上高が1,000万円だったとします。
同じ業種、同じような規模の会社が平均して1,500万円を上げているなら、自社には売上を生み出す仕組みに改善余地があると考えられます。
反対に、同業他社より高い水準であれば、現在の人員で比較的多くの売上を生み出している可能性があります。
日本政策金融公庫では、小企業の決算データをもとに、業種別の収益性や生産性などの経営指標を公表しています。
日本政策金融公庫の小企業の経営調査指標
自社の数字だけを眺めるのではなく、業界の数字と比較することで、自社の現在地が見えやすくなります。
ただし、同じ業種でも、外注を多く使う会社と、社内で業務を行う会社では数字が変わります。
外注費が多い場合は、「労働生産性」(粗利益÷従業員数)の比較で売る力を見るという方法もあります。
また、同業者比較だけでなく、自社の過去3年程度の推移も確認しましょう。
社員数が増えているのに、1人当たり売上高が下がり続けている場合は、組織の拡大に売上の仕組みが追いついていない可能性があります。
数字が低い原因を社員個人に求めない
ここで注意したいのは、1人当たり売上高が低いからといって、社員の能力が低いと判断しないことです。
数字が低いと、
「営業担当者の努力が足りない」
「社員に営業研修を受けさせよう」
と考えたくなるかもしれません。
しかし、1人当たり売上高は、社員個人の営業力だけで決まる数字ではありません。
次のような会社側の要因にも左右されます。
・商品やサービスの魅力が低い
・新規客獲得やリピートを生む仕組みがない
・営業担当者が事務作業に追われている
・提案しやすい商品が整備されていない
・社長がいなければ受注できない
つまり、社員の売る力は、個人の営業スキルだけではなく、会社のビジネスモデルによって大きく変わります。
見直すべきなのは、会社のビジネスモデル
ビジネスモデルとは、誰に、何を、どのように提供し、利益を生み出すかという会社全体の仕組みです。
社員に「もっと売れ」と求める前に、次の問いを確認します。
・商品・顧客の優先順位が決まっているか
・見込み客から問い合わせが来る仕組みがあるか
・継続契約や追加受注につながる商品があるか
・営業担当者が営業活動に集中できているか
・社長以外でも提案と受注ができるか
見直すべきは、社員が売りやすい商品と仕組みを、会社が用意できているかです。
1人当たり売上高は、社員を評価する数字ではなく、ビジネスモデルを点検するための数字と考えましょう。
粗利益で、会社に必要なお金を生み出せているか確認する
粗利益とは
粗利益とは、売上高から、その商品やサービスを提供するために直接かかった売上原価を引いた金額です。
記事内では、次の例で考えると分かりやすくなります。
1,000円で仕入れた商品を1,500円で売った場合、500円が粗利益です。
計算式は、次のとおりです。
粗利益=売上高-売上原価
粗利益は、決算書では「売上総利益」と表示されることもあります。
この粗利益から、給与、社会保険料、家賃、広告費、通信費などを支払います。
そのため、粗利益は、会社を維持し、利益を残すための原資です。
売上が増えても、粗利益が増えるとは限らない
どんぶり勘定の会社では、売上高だけを見て経営状況を判断しがちです。
しかし、売上が増えれば、必ず会社にお金が残るわけではありません。
例えば、次のような場合です。
・値引きによって売上を増やした
・仕入価格や外注単価が上がった
・利益率の低い商品ばかり売れている
・忙しくなったため残業代が増えた
・売上を増やすための広告費が増えた
売上が1億円から1億2,000万円に増えていても、粗利益率が下がれば、会社に残る粗利益はほとんど増えないことがあります。
場合によっては、売上が増えたことで仕事だけが忙しくなり、利益が減ることもあります。
そのため、売上高だけでなく、粗利益額と粗利益率を確認する必要があります。
粗利益額と粗利益率の両方を見る
粗利益率は、売上高に対して粗利益がどれくらい残っているかを示します。
計算式は、次のとおりです。
粗利益率=粗利益÷売上高×100
例えば、売上高が1億円、粗利益が4,000万円なら、粗利益率は40%です。
翌年の売上高が1億2,000万円になっても、粗利益が4,200万円であれば、粗利益率は35%に下がっています。
売上は20%増えていますが、粗利益は5%しか増えていません。
この場合、売上を増やすために多くの仕事をしているにもかかわらず、会社を維持するための原資は十分に増えていないと考えられます。
粗利益をみるときに確認したいのは、次の2点です。
1.必要な粗利益額を確保できているか
2.粗利益率が下がっていないか
粗利益は借入返済の出発点
借入金の返済は、粗利益からは、人件費や家賃などの経費を支払った残りのお金で行います。
粗利益が重要なのは、返済原資を生み出す出発点だからです。
流れを整理すると、次のようになります。
売上高- 売上原価= 粗利益
粗利益- 人件費やその他の経費= 営業利益
さらに、税金や減価償却費などを考慮して、実際の返済原資を確認します。
粗利益が不足すると、どれだけ経費を細かく削減しても、十分な利益や手許現金を残すのは難しくなります。
粗利益が不足しているときに見直すこと
粗利益が不足している場合は、売上を増やす前に次の項目を見直します。
価格を見直す
原材料費や人件費が上がっているにもかかわらず、販売価格を据え置いていないでしょうか。
値上げは顧客離れが怖いものです。
しかし、必要な粗利益を確保できない価格で販売を続ければ、忙しくても会社にお金が残りません。
原価を見直す
仕入先、発注方法、外注範囲、廃棄、手戻りなどを確認します。
単に安い仕入先を探すだけでなく、作業のやり直しや余分な在庫も含めて考えます。
商品構成を見直す
売上が多い商品と、利益が多い商品は同じとは限りません。
粗利益率の高い商品やサービスが売れやすい提案方法になっているかを確認します。
顧客構成を見直す
同じ商品でも、顧客によって値引き、配送、追加対応などの負担が異なります。
売上額だけでなく、顧客ごとの粗利益や対応時間も確認する必要があります。
粗利益を見る目的は、社員や経費を一方的に減らすことではありません。
自社が生み出した価値に見合う利益を、会社に残せているかを確認することです。
債務償還年数で、会社の投資余力を確認する
債務償還年数とは
債務償還年数とは、実質的な借入金を、会社が1年間に生み出す返済原資で割った数字です。
計算の基本的な考え方は、次のとおりです。
債務償還年数=実質的な借入金÷年間返済原資
記事内では、次のように説明します。
債務償還年数は、現在の借入金を返済原資で何年かけて返せるかを示します。年数が短いほど、追加借入を活用した成長投資を検討しやすくなります。
なお、実質的な借入金や返済原資の計算方法は、金融機関や分析目的によって異なる場合があります。
一般的には、借入金から返済に充てられる現預金などを差し引いた金額を実質的な借入金と考え、税引後利益と減価償却費などから返済原資を求めます。
債務償還年数は、返済能力だけを見る数字ではない
債務償還年数は、一般的には現在の借入金に対する返済能力を見るために使われます。
しかし、経営者にとっては、返済できるかどうかだけを見る数字ではありません。
今後の成長に向けて、どれだけ追加投資できるかを考える指標にもなります。
例えば、次のような投資です。
・生産設備や業務システム導入への投資
・店舗や工場の増設
・事業承継やM&A
債務償還年数が短ければ、現在の利益に対して借入負担が比較的軽く、追加借入を活用した投資を検討しやすくなります。
反対に、債務償還年数が長い場合は、新たな借入を増やす前に、粗利益や営業利益を改善する必要があります。
10年程度を一つの目安として考える
金融機関の融資判断は、債務償還年数だけで決まるものではありません。
次のような条件も含めて総合的に判断されます。
・担保となる資産
・預金やその他の保有資産
・自己資本
・業種と事業内容
・資金の使い道
・投資後の事業計画
・過去の返済実績
・金融機関との取引状況
そのうえで、会社の収益力から借入余力を考える場合、債務償還年数10年程度は一つの重要な目安になります。
金融機関の融資実務では、債務償還年数10年以内が重要な基準とされており、10年を超えると「要注意先」と判断されるリスクが高まるとされています。
支援先においても、渉外担当者との話し合いにおいて、債務償還年数が10年以内に収まる融資申請は、審査のテーブルに乗る実感があります。
ただし、これは絶対的な基準ではなく、業種・担保・自己資本なども総合的に考慮されます。
大切なのは、10年という数字だけで機械的に判断することではなく、自社の投資余力を考える目安として使うことです。
投資余力を簡単に考える方法
例えば、現在の実質的な借入金が5,000万円で、年間返済原資が1,000万円の会社があるとします。
債務償還年数は5年です。
仮に10年を一つの目安とすると、現在の返済原資から計算した債務負担の目安は1億円です。
単純計算では、その差額となる5,000万円が追加借入を考える際の一つの目安になります。
ただし、実際に5,000万円を借りられるとは限りません。
追加投資によって、
・利益がどれだけ増えるか
・新たな固定費がいくら増えるか
・返済原資がどう変わるか
・投資回収まで何年かかるか
を確認する必要があります。
つまり、債務償還年数は借入可能額を保証する数字ではありません。
投資計画を考え始めるための基準となる数字です。
債務償還年数が長い場合に行うこと
債務償還年数が長い場合、すぐに投資を諦める必要はありません。
まず、年数が長くなっている原因を確認します。
粗利益が不足している
価格、原価、商品構成を見直し、利益を生み出す力を高めます。
固定費が大きすぎる
現在の売上規模に対して、人件費、家賃、その他の固定費が適切かを確認します。
ただし、将来の成長に必要な人材や設備まで一律に削減しないことが大切です。
借入金が多すぎる
既存の借入条件や返済期間を確認し、金融機関と相談します。
現金を生まない資産が多い
不要な在庫、遊休設備、回収の遅い売掛金などがないかを確認します。
利益が一時的に落ちている
一時的な投資や外部環境の変化によるものか、ビジネスモデルそのものの問題かを区別します。
債務償還年数が長い場合は、借入だけを問題にするのではなく、利益構造と資産の使い方を合わせて見直します。
3つの数字から、何を経営判断すればよいのか
3つの数字は、確認しただけでは意味がありません。
採用、価格、投資などの具体的な経営判断に使う必要があります。
社員を採用してもよいか
社員を採用すると、給与だけでなく、社会保険料、採用費、教育費、備品、場所などの費用が増えます。
採用前には、次の順序で確認します。
1.1人当たり売上高は同業他社と比べて低すぎないか
2.新しい社員が売上を生み出しやすい仕組みは整っているか
3.新たな人件費を負担できる粗利益があるか
4.採用後に売上と粗利益がどの程度増えるか
5.一時的に利益が減った場合の余力が充分あるか
1人当たり売上高が低い状態で、同じビジネスモデルのまま人だけを増やすと、会社全体の固定費が増えます。
採用前に、社員が売りやすい仕組みを整えることが必要です。
商品やサービスを値上げすべきか
値上げを考えるときは、売上高だけでなく粗利益を確認します。
原価や人件費が上昇しているのに価格を据え置けば、粗利益は減っていきます。
次の数字を確認します。
・商品別の粗利益額
・商品別の粗利益率
・値上げ後の実際の販売価格
・顧客別の対応コスト
・値上げ後に必要な販売数量
値上げによって一部の売上が減ったとしても、必要な粗利益を確保できれば、会社全体の利益が増えることがあります。
大切なのは、売上を守ることではなく、会社の継続と投資に必要な粗利益を守ることです。
設備投資や新規事業に進んでもよいか
設備投資や新規事業を考えるときは、債務償還年数を確認します。
ただし、現在の年数だけを見るのでは不十分です。
投資後の計画も作ります。
・投資額はいくらか
・借入金はいくら必要か
・投資によって粗利益はいくら増えるか
・人件費や固定費はいくら増えるか
・投資後の債務償還年数は何年になるか
投資前の数字だけでなく、投資後の数字を予測することが重要です。
借入金を増やしてもよいか
金融機関が融資を提案してくれたからといって、借りられるだけ借りればよいわけではありません。
一方で、借入を極端に避けることが正しいとも限りません。
借入を活用することで、設備、人材、商品開発などへの投資を早められるからです。
ただし、判断すべきなのは、
借りたお金によって、返済額を上回る利益と将来価値を生み出せるか
です。
債務償還年数は、その判断のベースとなる数字です。
3つの数字を見るだけでは、どんぶり勘定から脱却できない
1人当たり売上高、粗利益、債務償還年数を計算しても、それだけで会社が変わるわけではありません。
数字を経営判断と行動につなげる必要があります。
STEP1 比較する
それぞれの数字を、次の対象と比較します。
・同業他社
・過去3年間の推移
・経営計画の目標
数字は単独で見るより、比較することで意味が明確になります。
STEP2 経営課題を一つに絞る
複数の数字が悪いと、あれもこれも改善したくなります。
しかし、一度に多くの課題へ取り組むと、どの施策が成果につながったのか分からなくなります。
例えば、1人当たり売上高が低い場合は、
・単価
・新規顧客数
・継続率
などから、最も影響の大きい課題を一つ選びます。
STEP3 経営判断を行う
課題が明確になったら、具体的な判断をします。
・価格を変える
・商品構成を変える
・顧客層を変える
・営業の手順を標準化する
・採用時期を決定する
・投資額を見直す
・借入方法を検討する
「様子を見る」だけで終わらせず、何を変えるかを決めます。
STEP4 社員の行動へ落とし込む
会社の粗利益を増やすという判断を、そのまま社員へ伝えても、何をすればよいか分からないことがあります。
社員が変えられる行動や成果へ分解します。
例えば、粗利益を増やすために、
・値引き率を下げる
・高粗利益商品の提案件数を増やす
・継続契約率を高める
・作業の手戻りを減らす
・原材料の廃棄を減らす
といった目標へ落とし込みます。
経営目標と社員の行動や成果をつなぐ仕組みとして、OKRなどの目標管理を活用する方法もあります。
重要なのは、数字の責任を社員へ押し付けることではありません。
社員が実際に数字を変えられる仕組みと行動を、会社が一緒になって考える姿勢が求められます。
STEP5 毎月レビューする
経営目標は、一度決めて終わりではありません。
毎月、次の点を確認します。
1.数字はどのように変化したか
2.決めた行動は実行されたか
3.行動によって期待した成果が出たか
4.うまくいかなかった原因は何か
5.翌月は何を続け、何を変えるか
数字、判断、行動、振り返りを繰り返すことで、経営判断の精度が高まります。
どんぶり勘定から脱却できているか確認するチェックリスト
次の項目を確認してください。
1人当たり売上高
✅年間売上高を従業員数で割っている
✅同業・同規模の会社と比較している
✅過去3年間の推移を確認している
✅商品、単価、集客、営業方法を見直している
粗利益
✅毎月の粗利益額と固定費の額を比較している。
✅粗利益率を前年と比較している
✅商品別または事業別の粗利益が分かる
✅値上げや原価上昇の影響を把握している
債務償還年数
✅実質的な借入金を把握している
✅年間の返済原資を把握している
✅債務償還年数を計算している
✅投資後の債務償還年数を予測している
経営判断
✅採用や投資の判断根拠を説明できる
✅数字から優先すべき課題を決めている
✅改善目標の担当者と期限が決まっている
✅社員の行動目標へ落とし込んでいる
✅毎月、数字と行動を振り返っている
該当しない項目が多い場合でも、すべてを一度に整える必要はありません。
まずは3つの数字を計算し、一つの経営判断に使うところから始めましょう。
まとめ|3つの数字を、根拠ある経営判断に使う
どんぶり勘定から脱却するために、難しい経営指標を数多く覚える必要はありません。
まず確認したいのは、次の3つです。
1.1人当たり売上高:売上を生み出す力
2.粗利益:利益を残す力
3.債務償還年数:未来へ投資する力
ただし、数字を計算するだけでは、どんぶり勘定から脱却したことにはなりません。
数字を比較し、課題を決め、採用、値上げ、借入、投資などの判断に使うことが必要です。
どんぶり勘定から脱却するとは、数字に詳しくなることではありません。
重要な経営判断を、勘ではなく根拠を持って行える状態をつくることです。
経営環境の変化に応じて、経営判断を行ううえでは、そういったことに強い税理士のサポートがあったほうが、良い結果を生む可能性が高まります。
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経営目標の設定方法|目標を達成させる7つのステップ
経営目標の設定方法|目標を達成させる7つのステップ

「今期の売上目標は10億円」
「営業利益率を5%にする」
「新規顧客を増やす」
このような経営目標を掲げたものの、社員の行動が変わらず、期末になって未達が判明する会社は少なくありません。
経営目標が達成されない大きな原因は、目標の数字が低いからでも、社員の努力が足りないからでもありません。
多くの場合、経営目標と日々の行動の間にある「達成までの道筋」が設計されていないことが原因です。
達成につながる経営目標を設定するには、次の順番で考える必要があります。
1.会社が実現したい将来像を明確にする
2.現状との差を把握する
3.経営目標を数値で設定する
4.顧客に提供する価値を決める
5.重要成功要因を絞り込む
6.KPIとOKRへ落とし込む
7.定期的に進捗を確認し、目標を修正する
この記事では、中小企業が経営目標を設定し、社員の行動へ落とし込む方法を具体的に解説します。
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経営目標とは、会社が実現したい状態を具体化したもの
経営目標とは、会社が将来実現したい状態を、期限や数値を含めて具体的に表したものです。
たとえば、次のような目標があります。
・3年後に売上高10億円を達成する
・営業利益率を3%から7%へ改善する
・新規事業の売上構成比を20%にする
・特定顧客への売上依存度を30%以下にする
・社員一人当たりの粗利益を20%向上させる
ただし、売上や利益の数字を掲げるだけでは、達成につながる経営目標にはなりません。
「どの顧客に、どのような価値を提供し、どの業務を変えることで、その数字を実現するのか」まで考える必要があります。
経営理念・経営方針・経営目標の違い
経営理念、経営方針、経営目標は、それぞれ役割が異なります。
その違いはそれぞれ次のように説明されます。

理念だけでは、社員は何をすればよいか判断できません。
反対に、数字だけでは、その目標を達成する意味や優先順位が伝わりません。
理念、ビジョン、経営目標、行動目標を一つの流れとしてつなげることが重要です。
経営目標を設定しても達成できない5つの原因
経営目標を設定しても達成できない会社には、共通する原因があります。
前年実績に数字を上乗せしただけになっている、売上と利益という結果指標しか見ていない、目標が多すぎる、部門目標や社員の行動につながっていない、設定後の振り返りが行われていない——この5つです。
それぞれの原因を放置すると、どれだけ良い数字を掲げても現場は動きません。
原因の詳しい内容と、社員を責める前に見直すべき仕組みについては、こちらの記事で詳しく解説しています。
なぜ目標を達成できないのか?目標未達成が続く7つの原因と改善の仕組み
ここから先は、目標を「立てる段階」で達成につながる形にするための具体的な手順を解説します。
達成につながる経営目標を設定する7つのステップ
ここからは、経営目標を設定する具体的な手順を説明します。

ステップ1.経営理念と将来ビジョンを確認する
最初に確認するのは数字ではありません。
「自社は、誰に、どのような価値を提供する会社なのか」
「3年後や5年後に、どのような会社になりたいのか」
を明確にします。
たとえば、単に「売上10億円を目指す」と考えるのではなく、次のように将来像を描きます。
地域の製造業から、技術課題を最初に相談される会社になる。
価格競争から脱却し、高付加価値案件を中心とする事業構造へ転換する。
この将来像があることで、売上目標の意味と、選ぶべき戦略が明確になります。
ステップ2.外部環境と自社の現状を分析する
次に、目指す姿と現在地の差を確認します。
外部環境では、次のような項目を調べます。
・市場の将来性はどうか?
・顧客ニーズはどう変化しているか
・競合は何を強みにしているか
・技術や制度はどう変わるか
・原材料費や人件費はどう変化するか
自社については、まず財務分析で自社の財務の現状を分析します。
そのうえで、なぜその結果になっているか、次の項目を確認します。
・顧客別・商品別の売上と粗利益
・顧客から選ばれている理由
・競合と比較した強みと弱み
・人材と組織能力
・生産能力と業務プロセス
ただ強みや弱みを並べるだけで終わらせず、「どの課題を解決すれば、将来像に近づけるか」まで考えることが重要です。
ステップ3.3~5年後の財務目標を数値化する
将来像と現状との差が分かったら、3~5年後の財務目標を設定します。
代表的な財務目標として、売上高増加・市場占有率などの成長性に関する目標、粗利益率や営業利益率などの収益性に関する目標、自己資本比率や債務償還年数など財務安定性に関する目標、在庫回転期間や売掛金回収期間などの資産効率に関する目標があります。
売上が伸びても、在庫や売掛金が増え続ければ、資金繰りが苦しくなることがあるためです。
将来像を実現するための自社の課題を分析して目標を設定しましょう。
ステップ4.顧客に提供する独自の価値を決める
経営目標を達成するには、顧客から選ばれる理由が必要です。
ここでは、次の3点を明確にします。
1.誰を主要顧客とするのか
2.顧客のどのような課題を解決するのか
3.競合とは異なる価値をどう提供するのか
経営学の教科書などでよく取り上げられる事例に、サウスウエスト航空があります。
サウスウエスト航空は、短・中距離を移動する顧客に対し、低運賃、定刻運航、多便数という価値を提供し、LCC(格安航空会社)の先駆けとして40年以上の連続黒字という驚異的な実績をあげました。
その実現を支えたのが、使用機材の統一、短い折り返し時間、機内サービスの簡素化など、相互につながった複数の活動です。
機材の統一という一つの施策が、整備費や訓練費の削減だけでなく、折り返し時間の短縮や機材稼働率の向上にも貢献しています。
良い戦略は、一つの施策だけに依存していません。
複数の施策が組み合わさり、顧客価値、低コスト化、資産の有効活用へ同時に貢献します。
自社でも、単に「品質を高める」「営業を強化する」と考えるのではなく、複数の活動がどのようにつながるかを考える必要があります。
ステップ5.戦略マップで達成までの因果関係を描く
経営目標と具体的な活動をつなぐために有効なのが、BSCの戦略マップです。
戦略マップでは、目標を次の4つの視点に分けます。

たとえば、製造業が営業利益率を改善する場合は、次のような因果関係を描けます。
提案力を持つ技術者を育成する
↓
顧客課題を把握する提案プロセスを確立する
↓
高付加価値案件の受注比率が高まる
↓
平均単価と粗利益率が上がる
このつながりが、戦略の仮説です。
戦略マップを作る目的は、きれいな図を作ることではありません。
「本当にこの取り組みを進めれば、経営目標へ近づくのか」を確認することです。
ステップ6.CSF、KPI、OKRへ落とし込む
戦略マップができたら、重要成功要因と測定指標を設定します。
CSFとは
CSFは、経営目標を達成するために、特に成功させなければならない重要な要因です。
先ほどの製造業の例では、次のようなものが考えられます。
・高付加価値商品の開発
・見積もり精度の向上
・不採算案件の削減
・生産リードタイムの短縮
すべての業務をCSFにしてはいけません。
戦略の成否を左右する、少数の重要項目に絞ります。
経営資源が限られる中小企業は、CSFを描きにくいことがあります。
そんなとき、私は財務分析から重要成功要因を逆算するというステップを挟みます。
ステップ2の財務分析と、ステップ3の財務目標のギャップのうち、最も改善余地が大きい項目を1~2選び、それを解消するCSFを経営者と一緒にAIも活用しながら考えます。
KPIとは
KPIは、CSFが計画どおり進んでいるかを確認するための指標です。

KPIは、測れる数字を選ぶだけでは不十分です。
社員の行動によって変えられ、変化した結果として経営目標へ近づく指標を選びます。
OKRとは
OKRは、組織が実現したい状態を表すObjectiveと、その達成度を測るKey Resultsを組み合わせる目標設定方法です。
たとえば、次のように設定します。
Objective
価格競争から脱却し、顧客から技術提案を求められる会社になる
Key Results
・受注生産品の売上構成比を30%から45%へ高める
・技術提案型の商談件数を月5件から月10件へ増やす
・半年以内に新商品の試作品を重点顧客5社へ提案する

経営目標が最終的な成果を示すのに対し、OKRは、一定期間に組織が集中する変化を明確にするために使います。
会社の経営目標と、部門・チームのOKRをつなげることで、社員が「自分たちは何に集中するのか」を理解しやすくなります。
OKRについて詳しくは以下の記事でも説明しています。
ステップ7.週次・月次・四半期で進捗を確認し、目標を修正する
経営目標は、設定して終わりではありません。
週次・月次ではKPIと行動の進捗を確認し、四半期では戦略の仮説や目標の設定そのものを振り返ります。
週次で確認すること
毎週、先週行ったことの振り返りと今週優先することを宣言し、チームで共有します。
リーダーは、メンバーの目標を評価し、必要がある場合はフィードバックや支援を行います。
月次で確認すること
目標を達成するために、簡単に解決できないことなどについて対話をし、より質の高い行動を引き出すための会議をチームで行います。
チームの中だけで解決できない内容は、上層部の会議に引き継ぎます。
四半期で確認すること
四半期改善ミーティングを行い、四半期で立てた目標と、結果とのギャップを明らかにし、必要がある場合は目標を修正します。
また、チームの運用面についても話し合い、改善できる点を改善します。
これらのミーティングで、未達だった社員や部門を責める場にすると、正確な報告が上がらなくなります。
レビューの目的は、責任追及ではありません。
目標と行動の因果関係を検証し、次の打ち手を改善することです。
経営目標の設定に使えるSMARTの法則
経営目標を文章にするときは、SMARTの考え方で確認できます。

たとえば、「利益を増やす」という目標は曖昧です。
SMARTを使うと、次のように具体化できます。
2029年3月期までに、高付加価値商品の売上構成比を高め、営業利益率を現在の3%から7%へ改善する。
ただし、SMARTは目標の表現を整えるための確認方法です。
SMARTを満たしていても、戦略との因果関係がなければ、達成方法は分かりません。
「具体的な目標を作ること」と「達成できる戦略を作ること」は分けて考える必要があります。
なお、経営を大きく変える必要がある場合は、SMARTのAは達成可能か(Attainable)ではなく、60~70%達成で十分な、野心的な目標(Ambitious)なものにするのが適切だと考えています。
変化が速く・不確実性が高い現代の経営環境において、現状の延長線上にある、達成可能性の高い目標ばかりでは、生き残っていくことはできません。
新規事業や新事業の開拓など、大きなチャレンジをすることが重要です。
経営目標を設定するときの5つの注意点
数字だけの目標になっている
経営目標は数字で表しますが、目標数字と現状とのギャップを埋める戦略が合っていないと目標は達成できません。
支援現場で目標設定の支援をしていると、例えば売上依存度が高い製造業では経営者が「新規顧客比率20%」のような目標を掲げるケースが多いでが、その目標を達成するには、CSFに「現場での提案型営業の確立」が設定されます。
こういった目標設定が散見されます。
目標数値を達成できる戦略は整合性があるのか?
具体的に何に取組むのか?
誰が、いつまでに、達成する責任があるか?
ここまで設定しないと、目標は達成されません。
KPIを増やしすぎない
経営目標達成のためにとKPIを増やしすぎると、優先順位が分からなくなり、労多くして成果があがりません。
KPIにすべき項目が多い場合は、経営目標の達成を左右するものに絞ったうえで、まず最初の3カ月どのKPIを達成すべきかの優先順位を決めましょう。
部門ごとに別々の目標を作らない
営業、製造、開発、管理などの各部門が、それぞれ独立した目標を作ると部分最適が起こります。
営業が短納期案件を大量に受注した結果、製造の残業と不良が増えることもあります。
会社全体の経営目標と戦略マップを共有したうえで、部門目標を設定し,共有します。
会社目標は、部門目標の全部が達成したときに、達成されます。
そのような部門目標になっていない場合は、部門目標を修正しましょう。
必達目標と挑戦目標を混同しない
資金繰りや最低利益など、必ず達成しなければならない目標があります。
一方で、新商品開発や事業変革など、不確実性の高い挑戦目標もあります。
両者を同じ基準で評価すると、社員は失敗を避けて低い目標を設定するようになります。
必達目標と挑戦目標は、目的と運用方法を分ける必要があります。
人事評価と目標管理を安易に一体化しない
目標の達成率をそのまま人事評価にすると、社員は達成しやすい目標を選ぶ可能性があります。
また、部門間の協力よりも、自分の数字を優先することがあります。
そうしてしまうと、結果的に「部門ごとに別々の目標」が作られてしまいます。
経営目標を実現するための目標管理と、社員の処遇を決める人事評価は、役割を整理して設計することが重要です。
経営目標設定チェックリスト
経営目標を決定する前に、次の項目を確認してください。
・経営理念やビジョンとつながっているか
・ターゲットや顧客と、顧客へ提供する価値が明確か
・現状値と目標値の差を把握しているか
・目標値の根拠を説明できるか
・達成期限が決まっているか
・達成に必要なCSFが絞られているか
・KPIが社員の行動とつながっているか
・部門間の目標に矛盾がないか
・定期的に戦略を見直す場があるか
チェックが多く付かない場合は、経営目標を発表する前に、達成までの道筋を見直す必要があります。
まとめ|経営目標は「数字」ではなく「達成の仕組み」まで設定する
経営目標の設定で重要なのは、売上や利益の数字を決めることだけではありません。
達成につながる経営目標は、次の流れで設定します。
1.経営理念と将来ビジョンを明確にする
2.外部環境と自社の現状を分析する
3.3~5年後の経営目標を数値化する
4.ターゲット顧客と提供価値を決める
5.戦略マップで因果関係を描く
6.CSF、KPI、OKRへ落とし込む
7.月次・四半期で検証と修正を続ける
経営目標は、経営者だけが知るべき数字ではありません。
社員が「何を優先し、何を変えれば会社の目標に貢献できるのか」を判断するための共通言語です。
経営目標を達成したいのであれば、目標値だけでなく、戦略、指標、行動、レビューまでを一つの仕組みとして設計することが重要です。
よくある質問
経営目標は何年先まで設定すればよいですか?
中長期の方向性は3~5年、具体的な実行目標は1年、重点的な取り組みは四半期単位で設定するのが一つの方法です。
将来の不確実性が高いため、長期になるほど細かな行動まで固定せず、方向性と到達したい状態を中心に設定します。
KPIはいくつ設定すればよいですか?
一律の正解はありませんが、経営会議で継続的に確認できる数に絞ることが重要です。
測れる数字をすべて管理するのではなく、経営目標の達成を左右する指標を選びます。
経営目標を社員へ浸透させるにはどうすればよいですか?
経営目標の数字だけでなく、設定した背景、顧客へ提供する価値、達成までの因果関係を説明します。
そのうえで、会社目標を部門やチームの目標へ展開し、定期的に進捗を共有する仕組みが必要です。
経営目標が未達になった場合は変更してもよいですか?
前提条件が変化した場合や、戦略の仮説が誤っていた場合は見直すべきです。
ただし、達成が難しいという理由だけで安易に下げるのではなく、未達の原因が行動不足なのか、指標の誤りなのか、戦略の誤りなのかを確認してから判断します。
経営目標の設定を専門家へ相談する判断基準はありますか?
経営目標の数値は決められても、戦略、部門目標、KPI、行動計画へ落とし込めない場合は、外部支援を検討する余地があります。
経営者と幹部で目標への認識が異なる場合や、毎年同じ目標を掲げながら未達が続いている場合も、設定過程を見直す必要があります。
経営目標を「社員が動ける目標」へ変えませんか?
経営目標の設定で本当に難しいのは、
目標の数字を決めることではありません。
会社のビジョンから戦略を組み立て、
部門と社員が動ける目標へ落とし込むことです。
経営計画がまだない場合は計画作成から、
すでに計画がある場合はOKRへの展開から、
会社の状況に合わせて整理します。
経営目標の設定についての相談については下記よりお問い合わせください。
記事作成者
山内聖堂
2011年の税理士登録後、事業計画策定支援コンサルティングを開始するも、事業計画を達成できない企業があるジレンマに悩み、組織開発コンサルティングへと軸足を移す。
近年では、組織の共通の目標に向かって、従業員がそれぞれの強みを活かして働く「しくみ」であるOKRの導入コンサルティングに力を注いでいる。
現在1on1マネジメントスクール内で、経営者・経営コンサルタント向けにOKR講師養成塾の講師を行っている。
https://1on1cs.jp/course/#okr
タグ: 中小企業 目標管理
経営計画を達成できない5つの原因|OODAループで計画を行動に変える
「経営計画を作ったのに、計画どおりに進まない」
「社員に説明したはずなのに、行動が変わらない」
「気づけば、計画を意識しているのは自分だけ」
このような悩みを抱える中小企業経営者は、少なくありません。
経営計画を達成できない主な原因は、社員のやる気や能力の不足ではありません。
多くの場合、経営計画と日々の経営判断をつなぐ仕組みがないことが原因です。
経営計画は、完成度の高いものを作れば達成できるわけではありません。
市場や顧客の変化を観察し、その意味を考え、次の一手を決める必要があります。
そこで役立つのが、OODAループです。
OODAループとは、状況を観察し、意味を考え、意思決定し、行動する流れを繰り返す方法です。
変化が速く、正解が分かりにくい現代では、最初に決めた計画を守り続けるより、状況に合わせて判断を変える力が重要です。
この記事では、経営計画を達成できない5つの原因と、OODAループを使って計画を実行に変える方法を、分かりやすく解説します。
また、コラムの内容をより分かりやすく、短くまとめたメルマガもお届けしています。
長い文章を読むのが少し負担に感じる方は、ぜひメルマガをご登録ください。
経営計画を作っただけでは達成できない
経営計画とは、会社が将来どのような姿を目指し、そのために何をするかを決めたものです。
例えば、次のような内容を決めます。
・3年後の売上と利益
・重点的に伸ばす商品や事業
・新たに獲得したい顧客採用や社員育成の方針
・今年取り組む重要課題
経営計画を作ることは重要です。
しかし、計画を作ることと、計画を達成することは別の仕事です。
旅行に例えると、経営計画は目的地と大まかな道順を決めた状態です。
出発時に決めた道順が、最後まで最適とは限りません。
道路が渋滞していたり、通行止めになったりすれば、現在地を確認して別の道を選ぶ必要があります。
経営も同じです。
顧客の要望、競合の動き、原材料価格、採用状況、技術などは変化します。
経営計画を達成するには、当初の計画を確認するだけでなく、変化を捉えて経営判断を修正する仕組みが必要です。
経営計画を達成できない5つの原因
1.目標が売上や利益だけになっている
「売上1億円を達成する」
「利益を1,000万円にする」
経営上、このような数値目標は必要です。
しかし、数字だけでは、社員は何をすればよいか分かりません。
売上を増やすには、商談を増やす、既存顧客への提案回数を増やす、平均単価を上げるなどの行動が必要です。
さらに、実際の顧客が何を求めているのかを観察しなければ、効果的な行動は選べません。
結果の数字だけでなく、顧客や現場の変化、社員の成長を確かめる目標も定めましょう。
2.重要課題が多すぎる
経営計画を作ると、営業強化、採用、社員教育、商品開発、業務改善など、会社には多くの課題があることが分かります。
しかし、人と時間が限られている中小企業が、すべてを同時に進めることは困難です。
取り組む課題が多すぎると、社員は何を優先すればよいか分からなくなります。
その結果、目の前の日常業務が優先され、経営計画は後回しになります。
まずは、今後3か月で特に重要な課題を1~3個に絞りましょう。
そのうえで、状況が変わった場合に優先順位を見直せるようにします。
3.会社の目標が社員の目標につながっていない
会社の目標を伝えただけでは、社員は日々の仕事で何を判断すればよいか分かりません。
例えば、会社の目標が「新規顧客を30社増やす」だったとします。
営業担当者は商談を増やす必要があります。
しかし、事務担当者や製造担当者は、自分の仕事と目標の関係が見えにくいでしょう。
会社の目標を、部門の目標や担当者の行動へ落とし込むことが必要です。
日本ではあまり意識されていませんが、部門の目標へと落とし込む前に、その目標に対して部門が果たすべき責任を決めることが重要です。
目標に対する責任が明確でないと、会社の目標と部門の目標につながりができなかったり、部門目標に対する行動がずれることがあります。
部門目標を決める前に、会社目標に対する部門の責任について話しあいましょう。
4.現場の変化を確認する機会がない
数年に一度経営計画を作り、1年に1回結果を確認するだけでは、途中で起きた変化に対応できません。
売上の数字だけでなく、顧客の反応や社員が感じた問題も確認する必要があります。
例えば、次の4点を毎週または毎月確認します。
・今回の打ち手で顧客にどんな変化があったか
・その変化は自社にどのような影響を与えるか
・今の課題は何で、解決策はなにか
・誰がいつまでに行動するか
現場で得た情報が経営層まで届かなければ、経営判断は過去の情報に基づくものになります。
経営層が広い視点で判断するためには、現場の小さな変化を吸い上げる仕組みも必要です。
5.一度決めた計画を変えてはいけないと思っている
経営計画を変更すると、「最初の計画が間違っていた」と感じる経営者もいます。
計画を作った時点では、未来の状況をすべて知ることはできません。
実行して初めて、顧客の反応、自社の本当の強み、予想外の問題が見えてきます。
計画の変更は、必ずしも失敗ではありません。
新しく得た情報を基に、より良い方法へ変えるヒントです。
会社が目指す方向まで変える必要はありません。
経営理念やビジョンといった目的は維持しながら、目的へ向かう方法や資源配分を柔軟に変えましょう。
OODAループとは、変化を見ながら判断する方法
OODAループは、「ウーダループ」と読みます。
次の4つの英単語の頭文字からつくられています。
・Observe:観察する
・Orient:どう行動するか判断する
・Decide:意思決定する
・Act:行動する
4つの段階を一度行って終わるのではありません。
行動によって得た新しい情報を再び観察し、次の判断につなげます。
この繰り返しを表すため、この記事では「OODA」ではなく「OODAループ」と表記します。
Observe:経営環境を観察する
経営層は、会社全体に影響する情報を広く観察します。
対象となるのは、次のような情報です。
・業界の予測
・顧客ニーズの変化
・競合企業の動き
・原材料価格や人件費
・法律や制度
・新しい技術
・社員や組織の状態
経営層の観察では、目の前の一件だけでなく、その変化が会社全体へ与える影響を見ることが重要です。
Orient:状況判断をする
集めた情報から、自社を取り巻く状況がどうなっているかを判断します。
OODAループの中でも、特に重要な段階です。
例えば、競合が値下げを始めた場合でも、自社も同じように値下げすることが正解とは限りません。
自社の強み、顧客が選ぶ理由、利益への影響などが、これからの自社にどう影響を及ぼすか、判断しましょう。
判断するにあたって、これまで自社で実施した打ち手の結果がどうだったか、振り返ることも大切です。
うまくいっていることだけでなく、何か間違えたことはなかったか?を振り返りましょう。
Decide:方針と資源配分を決める
状況判断を踏まえ、会社としての次の一手を決めます。
経営層の意思決定は、現場の個別対応とは異なります。
ヒト・モノ・カネ・時間を、どこへ配分するかを決めることが中心です。
現場の最新の情報も吸い上げながら、現時点で最も妥当な方針を決めます。
Act:組織が動ける状態をつくる
決めた方針を各部門へ伝え、行動へ移します。
経営層にとってのActは、経営者自身が作業することだけではありません。
現場が動けるように、次の条件を整えることも含まれます。
・重点目標を明確にする
・部門の責任を決める
・必要な予算を配分する
・権限を渡す
・判断基準を共有する
行動後に得られた結果や現場の情報を、再び観察に戻ります。
やってみた結果を観察して修正し、次につなげていく。
これを素早く繰り返すことで、成果を生み出しやすくなります。
経営層と現場ではOODAループの使い方が違う
経営層と現場では、見る範囲とループを回す速さが異なります。
その違いを現したのが次の表です。

現場は、顧客の反応やトラブルを見て、その場で対応します。
一方、経営層は現場から上がった情報をまとめ、市場全体や会社の将来を考えて方針を決めます。
この記事では、経営計画の達成がテーマであるため、ここからは経営層のOODAループに絞って解説します。
OODAループとPDCAの違い
OODAループとPDCAは、どちらも行動と改善を繰り返す方法です。
ただし、出発点と得意な場面が異なります。
OODAループとPDCAの違いを比較すると以下のようになります。

PDCAは、Plan、Do、Check、Actの順に、計画、実行、確認、改善を行います。
製造工程や毎月繰り返す業務など、一定の手順がある仕事に向いています。
一方、OODAループは、現在の状況を観察することから始まります。
変化が大きく、最初から正しい計画を立てにくい経営課題に活用しやすい方法です。
どちらか一方が、常に優れているわけではありません。
安定した業務はPDCAで改善し、変化の激しい経営課題はOODAで対応するという使い分けもできます。
経営計画の実行では、当初の計画を守ることが目的になってはいけません。
変化を観察し、計画と現実がずれていれば、行動を変えることが重要です。
参考:PDCAサイクルとOODAループ 厚生労働省
達成のキモは、早く作ってOODAループを回すこと
ここからは、私の独自の考えです。
変化が速く、複雑な現代では、最初から正解の経営計画を作ることは困難です。
経営計画の作成に時間をかけすぎると、完成した頃には市場の状況が変わっていることもあります。
そのため、経営計画は作るだけムダだと考えるようになりました。
しかし、今はAIを活用すれば、以前の数10倍の速度で経営計画を作ることができるようになりました。
経営層は、経営計画策定を通じて、会社が目指す姿や目標、重点課題を決めたうえで、OODAループを回します。
市場や顧客を観察し、自社への影響を考え、重点方針と資源配分を決め、組織を動かします。
行動によって新しい情報が得られたら、再び観察し、必要に応じて戦略を変えます。
経営計画は、未来を正確に当てる予言書ではありません。
会社が進む方向を示し、現実から学びながら、次の一手を考えるための道具です。
経営計画を実行に変えるOODAループの4つの手順

手順1.重点目標を決め、変化を観察する
最初に、今後3か月で達成したい重点目標を1~3個に絞ります。
そのうえで、目標に影響する顧客、市場、競合、自社の情報を観察します。
手順2.経営計画への影響を考える
集めた情報を見て、計画の前提が変わっていないかを確認します。
数字の良し悪しだけでなく、なぜ変化したのかを考えます。
事実と経営者の思い込みを分けることが重要です。
手順3.方針と資源配分を決める
次に何を優先するかを決めます。
同時に、人員、予算、時間をどこへ配分するかも決めます。
新しい施策は、小さく試せる範囲から始めましょう。
手順4.組織を動かし、再び観察する
決定した方針を、部門の責任と目標へ落とし込みます。
実行後は、結果と現場の反応を確認します。
うまくいかなかった場合も責任追及だけで終わらせず、新しく何が分かったかを次の判断へつなげます。
OODAループをOKRで組織へ実装する
ここまで紹介したOODAの4つの手順は、OKRを活用すると会社の仕組みとして実装しやすくなります。
中小企業では多くの場合、経営者が現場の判断まで担っています。
OODAループは、この「経営者が全判断を抱えている」状態を変え、経営層が与えた方針を基に、社員が現場で観察・判断・行動できる組織をつくる考え方です。
それを仕組みとして実装するのがOKRの役割です。
OKRとは、達成したい目標と、達成度を判断する具体的な成果をセットで決める目標管理の方法です。
まず、経営計画から、近々3か月の重点目標を設定します。
OKRでは毎月、数字と現場の変化を観察し、外部・内部の状況を判断し、次に行う行動を決めるミーティング(コンフィデンスミーティング)を行います。
OKRを使って目標を社員の行動に落とし込むことで、社員が自分で観察・判断・行動できる組織へ変わっていきます。
つまり、OKRは、目標を掲げるだけの仕組みではありません。
経営層の判断を社員の目標と行動へつなぎ、組織全体でOODAループを回すための実行の仕組みとして活用できます。
OKRの基本的な意味や設定方法は、OKRとは何か|中小企業向けに分かりやすく解説をご覧ください。
目標管理全体の考え方を比較したい方は、中小企業の目標管理とは|手法と実施手順も参考にしてください。
経営計画そのものの作成や、会社OKRへの落とし込みに課題がある場合は、【経営計画策定支援ページへの内部リンク】で支援内容をご確認ください。
まとめ|経営計画が達成できない原因を理解し実行に移す
経営計画を達成できない原因は、社員の努力不足だけではありません。
目標が行動や判断につながっていない、重要課題が絞られていない、市場の変化を確認していない、資源配分を見直していないといったマネジメントの問題があります。
重要なのは、完璧な経営計画を作ることではありません。
早く計画を作って、早く実行に移すことです。
そして、行動から得た情報を次の経営判断へつなげます。
OODAループを繰り返すことで、経営計画は変化に対応したものへ更新されます。
経営計画は、作って保管するための書類ではありません。
経営層がより良い判断を続け、会社を目指す方向へ動かすための仕組みとして活用しましょう。
よくある質問
OODAループとPDCAは、どちらが中小企業に向いていますか?
どちらか一方ではなく、課題に応じて使い分ける方法が適しています。
市場変化への対応や新規事業など、最初から正解を決めにくい課題にはOODAループが向いています。
製造工程や定型業務など、決めた手順を改善する課題にはPDCAが向いています。
OODAループを経営計画に使うにはどうすればよいですか?
まず経営計画の重点目標を1~3個に絞り、目標に影響する市場、顧客、競合、自社の情報を定期的に確認します。
その情報が計画へ与える影響を考え、方針と資源配分を決めて実行します。
実行後は結果を観察し、次の判断へつなげます。
OODAループとOKRはどう違いますか?
OODAループは、変化を観察して意思決定するための考え方です。
OKRは、会社の経営計画を部門や社員の目標と行動へつなぎ、組織全体で計画の達成を目指す目標管理の仕組みです。
経営層がOODAループで決めた方針を、OKRによって組織全体へ展開するという組み合わせができます。
経営計画を「社員が動く目標」へ変える
small-okrでは、経営計画を会社・部門・社員のOKRへ落とし込み、目標設定後の実行と振り返りまで支援しています。
計画はあるものの実行されていない会社や、変化に対応できる経営計画を作りたい経営者の方は、経営計画策定支援の内容をご確認ください。
なぜ目標を達成できないのか?目標未達成が続く7つの原因と改善の仕組み
経営目標が達成できないとき、最初に確認すること
「今期も売上目標に届かなかった」
「部門の目標を立てても、社員が思うように動いてくれない」
「毎月の会議で数字を見ているのに、一向に目標に近づかない」
こうした状態が続くと、社長はつい「社員のやる気や能力の問題では」と考えたくなります。
けれども、目標を達成できない状態が何度も続く会社では、個人の頑張りよりも目標を管理する仕組みのほうに原因があることがほとんどです。
最初に確認したいのは、次の5点です。
・目標が適切だったか
・目標が、具体的な行動に置きかえられていたか
・本当に大事な仕事に集中できていたか
・途中で進み具合を確認していたか
・うまくいかなかった原因を、次の行動に活かしたか
確認は、部下を責めるためのにするのではありません。
経営計画と現場の動きの「ズレ」を見つけ、仕組みを直すためのヒントです。
この記事では、目標を達成できない7つの原因と、社長がすぐ実行できる改善の手順を、できるだけやさしい言葉で説明します。
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目標を達成できない7つの原因
目標未達には、たいてい複数の原因が重なっています。代表的なものは次の7つです。

ひとつずつ見ていきましょう。
1.目標の根拠が曖昧
「前年より10%増やそう」
「今年は売上2億円を目指そう」
こうした数字を掲げても、どうやって実現するのかを説明できなければ、現場は動けません。
目標には、最低でも次のような根拠が必要です。
・どの顧客から売上を増やすのか
・どの商品を伸ばすのか
・新規のお客様を何件増やすのか
・客単価をどこまで上げるのか
・そのためにどれくらいの人手や時間が要るのか
数字だけ決めても、達成までの道すじは描けません。
目標を決めるときは、過去の実績だけでなく、市場の動き・自社の強み・使える人員までを踏まえて、「実現の前提」をはっきりさせておきます。
目標づくりの基本として、SMART(スマート)の法則という考え方があります。
Specific(具体的)/Measurable(数字で測れる)/Achievable(達成できる)/Relevant(経営に関連している)/Time-bound(期限がある)の頭文字をとったものです。
「売上を増やす」ではなく「既存顧客からの売上を10%、◯月までに増やす」といった形にすると、現場が動きやすくなります。
中小企業庁の調査でも、自社の強み・弱みだけでなく外部環境や経営課題まできちんと把握できている会社ほど、売上高や経常利益が増えたと答える割合が高い、という傾向が示されています。
目標未達を減らすには、「なぜその数字なのか?」という根拠を見直すことが大切です。
2.目標を「行動」に置きかえていない
「利益を増やす」「顧客満足を高める」「生産性を上げる」。
会社の方向性としては正しいのですが、これだけでは社員は明日から何をすればいいのかが分かりません。
たとえば「売上を10%増やす」を営業部に伝えるなら、ここまで分解します。
・既存顧客への提案件数を増やす
・しばらく取引のない休眠顧客に再提案する
・見積もりを出したあとのフォローを徹底する
・利益率の高い商品の提案比率を上げる
・商談から受注までの期間を短くする
このとき意識したいのが、定量目標と定性目標の使い分けです。
定量目標は「提案件数を月20件にする」のように数字で測れる目標。
定性目標は「お客様から最初に相談される営業になる」のように数字にしづらい状態の目標を指します。
会社が目指したい状態(定性)を示したうえで、その手応えを測れる数字(定量)に落とすと、目標と行動がつながります。
目標を達成できない原因を「社員のやる気不足」と決める前に、目標が行動に翻訳されていたかを確認してください。
目標の設定についてさらに詳しくは次の記事でも解説しています。
3.やることが多すぎる
中小企業では、次のような課題が同時に押し寄せます。
・売上を増やしたい
・利益率を改善したい
・採用を進めたい
・経営幹部を育てたい
・新商品を開発したい
・DXやAIを取り入れたい
どれも大事です。
けれど全部を同時に「最優先」にすると、人・時間・お金が分散し、ひとつひとつが中途半端になって、結局どの目標も達成できなくなります。
目標管理で大事なのは、目標を増やすことではなく、今期集中する重要課題を決め、「やらないこと」をはっきりさせることです。
優先順位を決めないと、社員は目の前の急ぎの仕事を優先し、「重要だけど急ぎではない」取り組みが後回しになります。
4.結果の数字だけを見ている
売上・利益・契約件数は、目標の達成度を測る大事な数字です。
ただ、これらは活動した「あと」に出てくる結果の数字です。
売上未達だと分かった時点では、すでに期間の大半が過ぎていることも珍しくありません。
そこで、結果の数字だけでなく、その手前で動く「先に変化する数字(先行指標)」も見ておきます。
たとえば売上目標なら、次のように分けられます。

KPI(ケーピーアイ=目標までの途中経過を測る数字)は、ゴールに向かっているかを確かめるための道しるべです。
KPIを定めて、目標の進捗を管理しましょう。
5.確認の間隔が長すぎる
評価制度のための目標管理をしている会社では、目標を決めたあと、半年や期末まで確認しないことがあります。
でも、確認した時点で大きく遅れていたら、取り返す時間が残っていません。
大事な目標ほど、短い間隔で見るのが基本です。
毎週:行動した内容、起きている問題、必要な手助け
毎月:成果、KPI、計画とのズレ
四半期:目標そのものと戦略の見直し
週1回の確認は、社員を細かく監視するためではありません。
つまずきを早く見つけ、必要な手助けをするためです。
「なぜできなかったのか」と問い詰めるのではなく、「何が進行をじゃましているか」「誰の協力があれば前に進むか」「今週は何を優先するか」を一緒に確認します。
こうした短いフィードバック(進み具合を伝え合うこと)を毎週くり返すだけで、目標を達成できない状態に早く気づけるようになります。
6.遅れを報告しにくい雰囲気がある
目標に届きそうにないとき、早めに報告できる会社と、ぎりぎりまで隠す会社があります。
違いを生むのは、失敗や遅れに対する社長・上司の反応です。
報告した社員が強く責められる職場では、悪い情報ほど上がってこなくなり、社長が気づくのは手遅れになってから、ということが起きます。
目標未達を減らすために必要なのは、遅れを「大目に見る」ことではありません。
遅れを早く共有する仕組みを取り入れることです。
早く分かれば、他部門から応援を出す、仕事の優先順位を変える、お客様と調整する、やり方を修正する、といった対策が打てます。
仕組みのなかで、挽回するために遅れを報告することを当たり前にしましょう。
7.振り返りがただの「反省会」
目標未達の振り返りで、「意識が足りなかった」「努力が足りなかった」といった精神論だけが並ぶことがあります。
これだけでは、次も同じことが起こります。
振り返りで大事なのは、反省することではなく、次の期間で変える行動を1つ決めることです。
少なくとも次の4点を整理してください。
・計画していたこと
・実際にやったこと
・計画と実績にズレが出た原因
・次回、行うこと・変えること
振り返りは、達成度を確認するだけでなく、改善点を見つけて次の行動につなげる作業です。
最後は必ず「誰が・いつまでに・何を変えるか」を決めましょう。
目標未達の原因を見つける5つの質問
目標を達成できなかったときは、社員に理由を聞く前に、社長や管理職がまず次の質問でチェックします。
1.目標の意味を社員が説明できるか
数字を覚えているだけでは不十分です。その目標が、お客様・会社・部門にとってなぜ大事なのかを説明できる状態が理想です。
2.達成するための行動が決まっていたか
「頑張る」「意識する」ではなく、具体的な行動が決まっていたかを見ます。
3.途中で確認できる数字と進捗管理があったか
結果が出る前に、順調かどうかを判断できる数字(KPI)が必要です。
また、その進捗を管理する仕組みが機能していたかも確認します。
4.問題が起きたとき相談できたか
社員が一人で抱え込んでいなかったか、上司が手助けできていたかを確認します。
5.前回の失敗から変えたことがあるか
毎回同じやり方で同じ結果なら、努力ではなく「やり方」を変える番です。
目標未達を改善する5つの手順

手順1.事実の確認
まず、目標値と実績の差を確認します。
ただし「達成率80%だった」という結果だけで良し悪しを決めてはいけません。
あわせて次も見ます。
・どの時点から遅れ始めたか
・そもそも当初の目標設定は妥当だったか
・何ができて、何ができなかったか
・今後も使える成果は残ったか
・その達成率は、全体目標のなかでボトルネックになっていないか
挑戦的な目標を掲げている場合は、未達=失敗とは限りません。
新しい客層への進出や新商品の開発、組織改革などは、短期間で完全には終わらないからです。
達成率だけでなく、次につながる学びが得られたかや、会社の中での重要度も確認します。
手順2.原因を4つに分けて考える
原因を次の4つに分けると、整理しやすくなります。

この分け方を使うと、何でも「本人の努力不足」で片づけるのを防げます。
原因が複数あるときは、いちばん影響が大きかったものを1つ選び、対策を打ちます。
手順3.大きな目標を数字に分解する
最終的な目標を、途中で確認できる数字に分けます。
たとえば売上目標は、次のように表せます。
売上 = 顧客数 × 購入回数 × 平均単価
新規営業なら、さらにこう分けられます。
新規売上 = 商談件数 × 受注率 × 平均受注単価
売上が足りない原因が、商談件数なのか、受注率なのか、単価なのかで、打つべき手は変わります。
「売上を上げよう」と号令をかけるのではなく、どの数字を改善するのかを具体的に決めましょう。
数字を具体的にすることで、「今の進み具合」が明確になります。
手順4.確認の間隔を短くする
目標未達を期末に知っても、改善は来期になります。
だから大事な目標は、週1回または2週に1回のペースで確認します。
確認項目は次の4つで十分です。
1.今の進み具合(達成度)
2.今週できたこと
3.進行をじゃましている問題
4.次に集中する行動
会議を長くする必要はありません。
大事なのは、立派な報告資料を作ることではなく、問題を早く見つけて、その場で決めることです。
手順5.次の期間で試す行動を数値で表す。
振り返りの最後に、次回変える行動を決めます。
たとえば、こんな具体策です。
・見積もりを出したら3日以内に必ずフォローする
・毎週月曜に、止まっている案件の理由を確認する
・利益率の高い商品の提案比率を○○%にする。
・失注したらお客様に理由を100%聞く
・部門をまたぐ課題を週1の会議で共有する
一度にあれもこれも変えると、何が効いたのか分からなくなります。
いちばん効きそうな1つを選び、小さく試しましょう。
次回の振り返りがあいまいにならないよう、行動を数値で表現することも重要です。
社員を責めても目標未達が改善しない理由
目標を達成できなかったとき、社員の努力不足を指摘するだけでは改善につながらないことがあります。
組織の中には社員本人では解決できない問題が混ざっているからです。
たとえば——部門間の役割が曖昧、社長の指示が頻繁に変わる、通常業務が多すぎる、必要な権限が与えられていない、人やお金が足りない、他部門の協力を得られない、といったものです。
社員に目標達成の責任を求めるなら、社長や管理職には達成できる環境を整える責任があります。
達成のじゃまになっている組織の壁を取り除き、社員が大事な仕事に集中できる状態をつくる、ということです。
私が中小企業の目標管理で特に大事だと考えているのは、次の3つの仕組みです。
1.優先順位を決める仕組み
2.会社の目標を、部門と社員の責任まで展開する仕組み
3.定期的に進み具合を確認し、修正する仕組み
この3つがないと、せっかく経営計画を作っても、現場の日常業務には反映されません。
目標未達を防ぐOKRの考え方
この3つの仕組みを全部含むのがOKRという組織マネジメントです。

OKR(オーケーアール)とは、Objectives and Key Results の略で、日本語では「目標と主要な成果」と訳されます。
- Objective(目標):実現したい状態。少しわくわくする、定性的な目標です。
- Key Results(主要な成果):それが実現できたかを測る、数字(定量的な指標)です。
たとえば、こう設定します。
Objective:既存のお客様から、最初に相談される営業チームになる
Key Results:
・重点顧客30社との面談を完了する
・新規提案件数を月20件に増やす
・提案から受注までの期間を平均30日以内にする
OKRの特長は、ただ数値目標を置くことではありません。
会社・部門・社員の目標をひとつにつなげ、限られた重要課題に集中し、短いサイクルで進み具合を確認することにあります。
OKR導入支援では、まず経営理念や中期経営計画と整合した「全社OKR」を決め、そこから部門やチームのOKRへ展開します。
四半期ごとに目標を立て、主要な成果に優先順位をつけて運用していきます。
事例:OKRを導入したサービス業
実際に、私が支援した従業員約30名のサービス業の例を紹介します。
この会社は、売上目標を掲げても、なかなか達成できないことが長年の課題でした。
「売上目標を掲げても、なかなか達成できないことが課題でした。長期的な視点で経営計画を策定し、財務目標以外の優先課題も全員で共有。一人ひとりのやるべきことが明確になり、目標達成につながりました。」
ポイントは、売上という結果の数字だけを追うのをやめ、長期の経営計画から優先課題を決めて全員で共有したことです。
「自分は今、何のために何をやるのか」がはっきりすると、現場は迷わず動けるようになります。
目標を達成できない状態を抜け出す近道は、数字を厳しくすることではなく、目標と日々の行動をつなぐ仕組みを整えることだと、改めて感じた事例です。
OKRについてさらに詳しくは ↓ よりご確認ください。
専門家に相談したほうがよい会社の特徴
次の状態が続くなら、社内だけで解決しようとせず、外部の専門家を使うのも選択肢です。
・経営計画が数値目標だけになっている
・部門ごとの目標が、会社の方針とつながっていない
・会議が報告だけで終わっている
・幹部によって目標管理のやり方がバラバラ
・社長がすべての進捗を抱えている
・未達のたびに社員の責任問題になる
・目標を立てても、結局は日常業務が優先される
外部の支援を選ぶときは、目標を作るだけでなく、経営計画とのつながり・部門への展開・具体的な行動への分解・進捗レビュー・管理職の育成まで支援してくれるかを確認してください。
目標設定だけ整えても、運用のやり方が変わらなければ、目標未達はくり返されます。
FAQ
Q1.目標を達成できない一番多い原因は何ですか
一つに限定することはできませんが、目標と日々の行動がつながっていないことが代表的な原因です。
売上や利益などの結果だけを示しても、社員は具体的に何を変えればよいか分かりません。
目標を行動や先行指標へ分解し、社員の責任が明確になることが重要です。
Q2.目標を達成できない社員には、どのように伝えればよいですか
最初から責任を追及せず、計画と実績の差が生まれた原因を一緒に確認してください。
本人の行動だけでなく、目標設定、役割分担、権限、他部門の協力、上司の支援も確認します。
Q3.目標未達成の振り返りでは何を話せばよいですか
計画、実行内容、差が生まれた原因、次回変更する行動の4点を確認します。
「もっと頑張る」で終わらせず、誰が、いつまでに、何を変えるかを決めることが重要です。
Q4.達成できなかった目標は、次期も継続すべきですか
経営上の重要性と未達成の原因を確認して判断します。
重要性が高く、方法に問題があった場合は、方法を変えて継続します。
前提条件が変わった場合や重要性が下がった場合は、目標そのものを見直します。
Q5.目標の進捗はどのくらいの頻度で確認すべきですか
経営目標は週次または隔週で確認するのが基本です。
毎週は行動と障害、毎月は成果とKPI、四半期ごとに目標や戦略そのものを見直すと運用しやすくなります。
Q6.OKRを導入すれば目標未達成はなくなりますか
OKRを導入するだけで、目標未達成がなくなるわけではありません。
会社と部門の目標をつなげ、優先順位を決め、定期的な進捗確認と支援を行う運用が必要です。
Q7.専門家へ相談する目安はありますか
同じ目標の未達成が繰り返され、社内で原因を特定できない場合が一つの目安です。
特に、経営計画を作っても達成できない場合や、会議が報告だけで終わっている場合は、外部支援を検討する余地があります。
まとめ|目標未達は、経営管理を見直すヒントになる
目標を達成できない原因は、社員の能力ややる気だけではありません。主な原因は次の7つでした。
・目標の根拠が曖昧
・目標を行動に置きかえていない
・やることが多すぎる
・結果の数字だけを見ている
・確認の間隔が長すぎる
・遅れを報告しにくい
・振り返りが反省会で終わっている
目標未達が分かったときに必要なのは、責任者を探すことではありません。
目標・戦略・実行・管理のどこに問題があったのかを見つけ、次の行動を1つだけ変えることです。
経営計画を社員の行動につなげ、短いサイクルで進み具合を確認できる仕組みがあれば、目標を達成できない状態に早く気づけます。
目標未達は、会社の弱さを示すだけの結果ではありません。
経営管理のどこを直せばよいかを教えてくれる、大切な情報です。
使用した出典一覧
- 中小企業庁「2020年版 小規模企業白書」/現状把握と売上・利益等の傾向
- OKR導入コンサルティング(small-okr)/経営計画とOKRの接続、四半期運用、OKRツリー、重要目標への集中と週次進捗共有
中小企業がOKR導入で陥りやすい失敗とその解決策|中小企業OKR
はじめに
近年、GoogleやLinkedInといった企業が採用している
組織マネジメント「OKR(Objectives and Key Results)」は、
中小企業においても導入が進んでいます。
しかし実際には、
**「導入してみたけれど運用が続かない」「形だけになってしまった」**
という声も少なくありません。
特に従業員数10〜100名規模の中小企業では、
リソースの制約や文化的背景により、つまずきやすいポイントがあります。
本記事では、中小企業がOKR導入で陥りやすい失敗例と、その具体的な解決策について解説します。
中小企業がOKR導入で失敗する3つの理由

1. 目標が現実離れしている
OKRの特徴は「ムーンショット(達成が難しい挑戦的な目標)」を掲げる点です。
しかし中小企業では、
経営者が理想を前面に押し出しすぎて、
社員が「到底無理だ」と感じるレベルの目標を設定してしまうことがあります。
また、目標設定があいまいなため、
PDCAがうまく機能せず、
行動が成果につながらないことが多々あります。
結果として、目標が「絵に描いた餅」となり、
現場のモチベーション低下を招きます。
2. 運用が続かず形骸化する
OKRは四半期ごとに設定するのが一般的ですが、
初めてOKRを導入する企業のなかには、半期ごとに設定することがあります。
目標がムーンショットの場合、
半期OKRでは目標と現実のギャップが大きすぎて、
「全然達成が見えないし、もうOKRやる意味ないよね!」
と、目的を見失い、モチベーションが低下するケースが多々あります。
また、最初は意気込んで導入しても、
定例の進捗確認が行われなくなり、1年後には
「OKRってまだやってるの?」
という状態になることもあります。
特に少人数組織では日々の業務に追われ、
OKR運用イベントが後回しにされがちです。
その結果、導入時の熱意は薄れ、
形だけが残る状態になります。
3. 人事評価と直結させてしまう
OKRは「成果を測る指標」であって、
「人事評価の点数付け」ではありません。
しかし、評価制度を運用している中小企業では、
「OKR達成率=評価」という誤った運用をしてしまうケースがあります。
これにより、社員は
「達成しやすい目標」
を立てるようになり、
本来の挑戦的な目標設定をしなくなります。
失敗を防ぐための解決策
1. 必要十分条件を満たす適切な目標設定をする

Objective(目標)は挑戦的でも、
Key Results(成果指標)は測定可能で現実的にすることがポイントです。
なおかつ、ObjectiveとKey Resultsが「必要十分条件」を満たすことが重要です。
たとえば、
「顧客体験で業界No.1を目指す」
というObjectiveに対して、
KRは、
「顧客満足度調査で80%以上」
「月間新規顧客数を20%増」
といった具体的な数値を設定します。
「顧客満足度80%以上かつ、新規顧客獲得数20%増を満たせば、顧客体験は業界No.1である。」
社員全員が分かりやすく、
測定できるKRを設定すると、ど
れだけ目標に近づいているかわかります。
適切な目標を設定することで、
社員も「努力すれば届く」と感じやすくなり、
現場のやる気を引き出せます。
2. 運用ルール通りに運用し、特にチェックインは必ず行う

OKRは四半期ごとに設定するのが一般的ですが、
月1回の進捗確認では遅すぎます。
中小企業では、
週次または隔週で「チェックインミーティング」を行うことが重要です。
-
進捗の共有(何ができたか)
-
課題の共有(どこでつまずいているか)
-
次のアクション(誰が何をするか)
このシンプルな流れを繰り返すことで、
形骸化を防ぎ、
「今やっている仕事がOKRにつながっている」
という実感を維持します。
3. 評価制度と切り離して運用する

OKRは「挑戦と学習の仕組み」であり、
基本的には人事評価のためのものではありません。
もし評価制度に組み込みたい場合は、
「OKR達成率」ではなく
**「OKRに基づく挑戦姿勢」や「チーム貢献度」**
といった観点で評価するのが望ましいです。
また、既にMBOを導入している企業が、
OKRを人事評価に紐づけたい場合は、
達成可能な目標(ルーフショット)を立てるようにしましょう。
成功のために必要な組織文化

1.従業員の強みを活かす
調査会社ギャラップ社によると、
個人の強みを活かす機会を持った従業員は、
エンゲージメント(働きがい)が6倍高まるという調査結果を発表しています。
強みを活かす事で、
従業員は自己肯定感を高め、
結果組織の生産性向上に貢献するのです。
強みを活かすためには、
強みを正しく把握する必要があります。
会社に所属するメンバーの強みを把握して、
適切な戦略を採用しましょう。
チームでメンバーの強みを活かすためには、
シンプルで正しい診断を行う必要があります。
私たちは、
チームビルディングに「効き脳診断」を活用しています

2. 心理的安全性を高める

Googleの研究でも示されている通り、
心理的安全性は高パフォーマンスチームの基盤です。
「意見を言っても否定されない」「失敗しても責められない」
そういう環境があることで、
社員は積極的にアイデアを出し、挑戦します。
個人の強みをチームの他のメンバーが把握していると、
「人と人は違う」ということが明確になり、
意見は否定されなくなり、
挑戦による失敗も責められなくなります。
OKRをうまく運用するためには、
単なるフレームワーク導入だけでなく、
心理的安全性の確保が不可欠です。
3. 挑戦を称賛する仕組みをつくる

OKRの本質は「未達でも学びがある挑戦」です。
したがって「目標を達成できたか」だけでなく、
「どんな挑戦をしたか」を評価・称賛する文化を組織に根付かせる必要があります。
OKR運用イベントのウィンセッションを、
「挑戦したこと自体をたたえる場」として活用しましょう。
まとめ
中小企業がOKRを導入するときに陥りやすい失敗は、
-
目標が現実離れしている
-
運用が続かず形骸化する
-
人事評価と直結させるため、罰則的に機能している
の3つです。
これらを防ぐためには、
-
適切な目標設定
-
OKR運用イベント実行の徹底
-
評価制度と切り離した運用
が不可欠です。
そして何より、OKRの成功は「組織文化」にかかっています。
従業員の強みを活かす事を重視し、
心理的安全性を高めながら、
挑戦を称賛する仕組みを整えることで、
OKRは単なる管理手法ではなく、
中小企業の成長を加速させる組織マネジメントになります。
OKRの定義や、中小企業のOKR導入については、
詳しくはこちらもご覧ください。
ワンマン経営から脱却するには?|中小企業の成長を加速するワンマン経営脱却のやり方
はじめに
中小企業やスタートアップの多くは、創業者の強いリーダーシップによって急成長を遂げます。
しかし、組織の規模が拡大するにつれて、ワンマン経営の限界が露呈し、成長の壁に直面することがあります。
本記事では、ワンマン経営の特徴と課題を整理し、組織を持続的に成長させるための脱却方法を3つのステップで解説します。
ワンマン経営の特徴と課題:中小企業が直面するリスクとは?
ワンマン経営とは、企業経営者が組織の意思決定をほぼ一手に引き受ける経営スタイルのことを指します。
特に中小企業や創業間もない企業で見られがちで、経営者自身の経験や直感を活かして素早く判断を下すことが特徴です。
しかし、このスタイルには明確なメリットと、見過ごせないデメリットが存在します。
ワンマン経営のメリット
ワンマン経営の最大の利点は、意思決定のスピードです。
市場の変化が激しい現代において、素早く方向転換できることは競争優位性につながります。
また、経営者のビジョンが組織にダイレクトに反映されるため、戦略の一貫性を保ちやすいという利点もあります。
ビジョンが明確でカリスマ性のあるリーダーであれば、短期間での事業成長が期待できるケースもあります。
ワンマン経営の課題とリスク
一方で、ワンマン経営には重大な課題も潜んでいます。
まず挙げられるのが、意思決定の偏りです。
経営者の主観に基づく判断は多角的な視点を欠く可能性があり、結果として経営リスクが高まる恐れがあります。
さらに、従業員が意思決定に関与できない環境では、人材の成長機会の損失もあげられます。
このような環境では、「指示待ち社員」が大量生産されます。
自らの意見が尊重されないと感じた従業員のモチベーション低下や離職が続けば、組織全体の生産性にも影響を及ぼします。
また、事業規模が拡大するに伴い、経営者一人での全体管理の限界という問題も発生します。
これは、組織の統制不能や業務の属人化を招きます。
また、経営者が多忙で、本質的な判断の質が低下するため、企業の成長を妨げる大きな要因となります。
組織改革の必要性
このような背景から、近年では「ワンマン経営からの脱却」が中小企業における重要な経営課題となっています。
組織に多様な意見や視点を取り入れる体制を構築し、分権化やチームマネジメントへの移行が求められています。
ワンマン経営から脱却する3つのステップ
ステップ1:権限委譲とミドルマネジメントの育成のための棚卸
まずは、経営者に集中している業務と意思決定権限を見直すことが重要です。
そのために行うのが「人材の棚卸」と「業務・役割の棚卸」です。
従業員の強みや将来性を見極め、チームリーダーやマネージャー候補を特定します。
従業員の強みや将来性だけでなく、コミュニケーションの特性まで特定するためには、診断を活用することが有効です。
同時に、経営者が担っている業務や意思決定を洗い出し、どの範囲を誰に委譲できるのかを明確化します。
このプロセスを経ることで、現場に裁量を持たせた自律的な組織体制へと移行する準備が整います。
ステップ2:意思決定プロセスの可視化とルール整備
次に取り組むべきは、意思決定の仕組みを組織全体にとって「見える化」することです。
ワンマン経営では、経営者の頭の中だけで物事が決まってしまうケースが多く、組織が主体的に動けません。
その解決策が、「業務フローの標準化」と「意思決定ルールの明文化」です。
例えば、「営業戦略の変更は誰が判断するのか」「採用方針はどの段階で経営陣の承認が必要か」といった、判断基準と責任範囲を明確にすることがポイントです。
これにより、従業員は自信を持って行動できるようになり、組織全体の判断スピードが向上します。
ステップ3:社内コミュニケーションの活性化と心理的安全性の構築
最後のステップは、社内コミュニケーションの質と量を高めることです。
ワンマン経営下では、従業員の声が経営層に届きにくくなりがちで、それが不信感や受け身の組織文化につながります。
これを打破するには、日常的な情報共有の仕組み化と、意見を出しやすい風土の醸成が必要です。
たとえば、朝礼や週報だけでなく、1on1ミーティングの定期開催やオープンな議論を促す会議設計を導入することで、従業員が安心して発言できる「心理的安全性」が高まります。
経営者自身も、自分の考えをオープンに伝えることで、双方向のコミュニケーションが生まれやすくなります。
こうした取り組みが進むことで、社員一人ひとりが自分の役割と責任に誇りを持ち、組織に主体的に関わる文化が育まれます。
これは、持続的な成長に不可欠な「組織エンゲージメントの向上」につながる大切な要素です。
まとめ:ワンマン経営からの脱却は「組織文化の再構築」
ワンマン経営のままでは、企業の成長は頭打ちになります。
だからこそ、社内の棚卸 →意思決定 プロセス整備 → コミュニケーション活性化という3ステップで、組織の自走力を高めていくことが不可欠です。
中小企業がこれからも競争力を維持し、社員とともに未来を描いていくためには、「脱ワンマン経営」は避けて通れない変革の第一歩なのです。
ワンマン経営脱却に中小企業OKR
権限移譲とミドルマネジメントの育成が進めば、ワンマン経営から脱却することができます。
権限移譲やミドルマネジメントの育成に適した「しくみ」がOKRです。
OKRは、企業が目指す挑戦的な目標と社員一人ひとりの目標をリンクさせることにより、すべての社員が一丸となって同じ方向を向いて重要課題に取り組みむ組織マネジメントです。
高い目標に挑むためには、社員の強みを最大限活かす組織づくりが必要です。
中小企業OKRでは、まず社員の強みを診断し、将来性やコミュニケーションの特性を組織で共有します。
その強みをチームの中でどう活かすのか、チーム全員で意識して目標達成に挑みます。
強みを活かす組織では、メンバーの自己効力感が高まり、組織エンゲージメントが向上し、生産性が上がります。
中小企業OKRでは、経営者層が考えた目標に対して、チームごとに「チームの責任」を定義して目標に挑むので、チームの判断基準や責任範囲が明確になります。
経営者層が考えた目標に従って、全体の目標が決まっていくので、ワンマン経営のメリットである戦略の一貫性を損ないません。
OKRは、組織の意思決定の仕組みを組織全体に「見える化」するしくみなので、自然と権限委譲が進みます。
中小企業OKRは、1on1やOKR運用イベントを通じて、目標達成に向けての課題解決のコミュニケーションを継続的に行うしくみです。
双発的な課題解決のためのコミュニケーションを続けることで、
「実践 ⇒ 振り返り ⇒ 気づき ⇒ 実践」
といった成長サイクルが回り、メンバーの能力が向上します。
中小企業OKRでは、OKRの導入だけでなく、社員のマネジメント能力向上に必要な研修も行います。
学んだことを活かして、目標達成や課題解決に挑むので、学んだことが定着し、マネジメント能力が向上します。
中小企業OKRについて詳しくはこちらもご覧ください。
中小企業で自律型人材を育成するならOKRの導入を
自律型人材とは?中小企業が求める理由
中小企業の経営者と話していると、多くの経営者が、自分の判断で行動する社員が欲しい。
つまり、自律型人材が欲しいと口にします。
厳しい経営環境の中で、指示を待たずに行動できる人材は、組織全体の成長を支える大きな原動力になります。
自律型人材の特徴や求められる背景、中小企業にもたらすメリットについて解説します。
自律型人材の特徴
自律型人材とは、自己の判断で行動し、責任を持って業務に取り組める人を指します。
主な特徴としては以下のようなものがあります。
目標意識が高い
自ら目標を設定し、達成のために計画的に動きます。
主体性がある
上司の指示がなくても、課題を見つけ自ら行動できます。
目的を持って学び続ける姿勢
変化に柔軟に対応し、自発的にスキルアップを図ります。
このような人材は、成長を目指す中小企業にとって必要不可欠な戦力となります。
なぜ今、中小企業で自律型人材が求められているのか
近年の急速な市場変化や働き方の多様化により、企業は柔軟かつ迅速に変化する必要があります。
特に中小企業では人材や資源が限られているため、指示を待たずに自ら考え行動できる自律型人材の存在が不可欠です。
また、業務の複雑化・高度化により、自己管理能力の高い人材が組織の成長を左右する重要なカギとなっています。
自律型人材が中小企業に与えるメリット
中小企業にとって、自律型人材を採用・育成することには多くのメリットがあります。
具体的には
業務効率の向上
細かなマネジメントが不要になるため、組織全体の生産性が向上します。
イノベーションの創出
現場からの提案が増えるため、新しいアイデアが生まれやすくなります。
組織の柔軟性向上
変化に迅速に対応できる体制が構築できます。
以上のような効果から、結果として、企業全体の競争力強化や持続的成長に大きく貢献します。
問題人材と自律型人材は紙一重
人は思考・感情・行動の生き物と言われています。
思考や感情により判断し、行動に移します。
判断のもととなる思考は、「思考特性」に大きな影響を受けます。
同じ情報を受けても、思考特性により捉え方が異なります。
情報の捉え方が異なるため、人によって行動に違いが現れるのです。
部下からあがってきた仕事が、
「なんじゃ、こりゃ!!?」
となるときは、上司と部下の思考特性が異なるからです。
経営者層が期待する行動と、部下の行動が異なると、
「あいつは問題社員だ!」
とされるのですが、本人は自らの判断で自律的に動いているだけなのです。
部下の判断が、上司の判断と合っていれば自律型人材。
部下の判断が、経営者や上司の判断と違っていれば問題人材にされてしまいます。
問題人材を自律型人材に変えるOKR
問題人材が問題なのは、会社のビジョンや目的・目標、そこで果たしてほしい役割が分からず行動していることです。
であれば、会社のビジョンや目的・目標・そこで果たしてほしい役割が分かって行動できるようになれば良いのです。
OKRは、そういったことを全社的に伝えるツールです。
OKRによって、会社のビジョンや目的・目標、そこで果たしてほしい役割が共有されれば、問題人材は自律型人材に変わります。
また、感情は思考より強く、理屈抜きで人を動かすといわれています。
OKRでは、ワクワクしながら取り組めるOKR目標を全員の意見を取り入れ設定するので、プラス思考で仕事に臨むようになります。
OKRは、メンバーの感情や思考をプラスにするしくみでもあるので、ますます自律的に働くようになります。
OKRとは?基本概念を分かりやすく解説
OKRの特徴と効果
OKRとは、「Objectives and Key Results(目標と主要な結果)」の略称です。
OKRでは、「達成目標(Objectives 以下O)」とその達成度を測る「主要な成果(Key Results以下KR)」を設定します。
企業が目指すべき目標と社員一人ひとりの目標をリンクさせることにより、すべての社員が一丸となって同じ方向を向いて重要課題に取り組みます。
企業目標とリンクした個人目標を、高い頻度で設定・進捗管理・評価を行います。
達成目標Oは、現状の延長線上にある目標ではなく、企業やそこで働く人々がワクワクするような、野心的な目標を掲げます。
具体的で、かつ、定性的な目標設定が推奨されています。
主要な成果KRは、Oに対する評価指標です。
難しいが達成が不可能でないと感じる定量的な目標を3~5つ設定します。
OKRは主に
・野心的な目標を設定するため、達成すれば大きな成果が得られる。
・全体で共有された目標を達成するために、組織に一体感が生まれる。
・失敗が許される環境が生まれ、メンバーが成長する。
・新たなアイデアが生まれやすくなる
といった効果があります。
OKRとKPIの違い|なぜOKRが自律型人材を増やすのか
KPIとは「重要業績評価指標(Key Performance Indicator)」の略称で、目標達成やビジネス戦略の実現に向けた業務プロセスが適切に実施されているかを測る定量的な指標のことです。
目標の設定はトップダウンで、達成度が100%の必達目標が課されます。
トップダウンのため、メンバーのやりたい、やりたくないは関係ありません。
達成の仕方がある程度わかっており、行動量のみが達成の成否に影響する事業や目標は、KPIが適しています。
しかし、創造的で高い目標をKPIで管理すると、エンゲージメントが低下し、不正が起こりやすくなります。
近年、日本企業で不正案件が増えているのには、そういった背景があります。
OKRは、企業が目指すべきビジョンや目標と社員一人ひとりの目標がリンクしているため、そこで果たす役割が企業の目標達成に直結します。
企業の目標達成のために、達成度が60%程度で良いとする挑戦的な目標を自ら設定し、自らの責任で目標達成に挑みます。
100%達成の難しい目標に挑むため、失敗は許容され、大胆に挑戦することができます。
OKRは、組織全体で目標を共有し、達成度を測ることで、個人やチームに目標達成のための自律的な行動を促し、自律型人材の育成を促進します。
中小企業でもOKRを導入する企業が増えている理由
中小企業が限られたリソースの中で成果を上げるためには、自律型人材、つまりは迅速な意思決定と行動をする人材を育成する必要があります。
OKRは、OKRで組織全体の方向性を統一し、従業員のモチベーション向上や迅速な意思決定・行動を促進します。
OKRの対話やフィードバックを通じて、一人ひとりの自律性が育まれます。
変化の速い時代の中で、時代の変化に素早く対応し、自律型人材を育成するために、中小企業でもOKRの導入が増えています。
OKR導入が自律型人材を育成する理由
自律型人材育成のポイント
自律型人材を育てるためには、「自ら考え、行動する力」を引き出す仕組みが重要です。
OKRは、企業の目標を全員で共有し、目標設定の段階で社員の意見を取り入れ、目標達成に向けた進捗を定期的に共有し、その過程で社員が自ら考え、行動し、定期的に振り返ることで自律性を養います。
OKRは、メンバーの自律性を高め、自律型人材の育成に効果的なフレームワークです。
次からは、OKRが自律型人材を育成する具体的な理由について説明します。
明確なビジョンと目標の透明性が自律的行動を促す
OKRの大きな特徴の一つは、目標を組織全体に公開する透明性です。
これにより、各メンバーは自分の役割や貢献がどう全体に繋がっているかを理解しやすくなります。
目的が明確になれば、自らの判断で行動する意欲も高まり、結果として自律的な働きを促進します。
また、目標が可視化されることで、チーム間の連携や協力も生まれやすくなり、信頼関係の構築にもつながります
チャレンジングな目標が自律的な行動を引き出す
OKRでは、達成率100%ではなく60〜70%を目指す「チャレンジングな目標設定」を全員の意見を取り入れて設定することが推奨されます。
このアプローチは、メンバーにとって程よいプレッシャーとなり、創造的で主体的な行動を引き出します。
OKRでは、目標達成に向けて最善の方法を模索することが求められるため、試行錯誤を通じて思考力と行動力が鍛えられます。
結果として、自律性が自然と育まれていきます。
継続的な対話とフィードバックが自律性を養う
OKRのでは、OKR運用イベントで目標の進捗を定期的に共有し、互いにフィードバックを行います。
定期的な対話の場を設けることで、目標達成を相互に支援します。
自分の仕事の成果を客観的に評価し、改善を続けることで、自己成長を実感し、その経験が自律性を高めます。
また、この継続的なコミュニケーションは、自律性を養うだけでなく、安心して挑戦できる心理的安全性も生み出します。
自律型人材育成を目的としたOKR導入のステップ
変化の激しい現代のビジネス環境において、社員一人ひとりが自律的に動ける組織作りは、多くの企業にとって重要な課題です。
そんな中で注目されているのがOKRを活用した人材育成のアプローチです。
ここでは、OKRで自律型人材が育つ4つのステップを紹介します。
ステップ1:会社のOKRを明確に設定する
最初のステップは、企業全体の目的・目標と成果を明確にすることです。
会社のビジョンや戦略を踏まえ、「今、何を目指すのか」「何を達成すれば成功といえるのか」を具体的に定めます。
組織全体の方向性がはっきりすれば、チームや個々が自分の役割を理解できるため、自律的な行動が取れるようになります。
ステップ2:チームや個人レベルでOKRを設定
次に、全社OKRをもとに各チームや個人のOKRを設定し、チームで共有します。
このプロセスを通じて、社員は自らの業務が会社全体にどう貢献しているのかを理解できます。
トップダウンではなく、ボトムアップで目標設定を行うことで、自律的な取り組みを促すことができます。
また、お互いの役割が理解できるので、他のメンバーから見ても正しいと感じられる行動が取れるようになります。
ステップ3:定期的な進捗確認とフィードバック
OKRの効果を最大化するには、進捗を定期的に確認する場を設けることが重要です。
週次や月次での振り返りミーティングを通じて、目標への進捗を確認し、必要に応じて軌道修正を行います。
また、上司や同僚からのフィードバックを受けることで、自己成長のヒントが得られます。
振り返りを行うことで、経験学習サイクルが機能し、自律型人材の育成に繋がります。
ステップ4:評価と改善を繰り返す
期末にはOKRの達成状況を評価し、その結果を次の目標設定に活かします。
重要なのは「未達=失敗」ではなく、そこから何を学んだかを重視する姿勢です。
PDCAを繰り返すことで、社員自身が主体的に成長する力を養うことができます。
まとめ|OKR導入で自律型人材を育成し、中小企業の成長を加速しよう!
OKRは単なる目標管理の手法にとどまらず、自律型人材の育成に非常に効果的なフレームワークです。
目標の透明性、挑戦的な目標の設定、定期的な対話を通じて、社員の自律性と成長を引き出し、組織全体のパフォーマンス向上につなげます。
中小企業こそ、OKRを活用し、自律型人材が育つ組織文化を築いていくことが必要です。
中小企業が成果につなげるチームビルディング:具体的な方法や効果、注意点を簡単に
チームビルディングとは
チームビルディングとは、個性あふれる多様な人材が集まる組織において、それぞれの強みを最大限発揮し、経営目標を達成する組織づくりのための取組全般をいいます。
チームビルディングは、変化が速くかつ複雑な現代のビジネス環境のなかで、企業がビジョンや経営目標を達成する組織をつくるために行われます。
チームビルディングの3要素
私たちが、チームビルディングを行う上での土台としているのが、コーチングファームジャパンの石見幸三氏が提唱したチームビルディングSSR理論という考え方です。
チームビルディングSSR理論では、組織の力を「人材力/Strength」「組織力/Structure」「関係力/Relation」の3つの要素に分類しています。
それぞれの要素は、以下のように説明されます。
①人材力(強み/Strength)
メンバーの強みや思考・行動の特性を踏まえて、信頼感を醸成しながら適所適材やリーダーシップ発揮を考える力
②組織力(構造/Structure)
会社のビジョンと、そこで期待されるチームの目的や目標、そこから導かれる個人の目標の接点をしっかりつくったうえで、メンバー一人ひとりが主体的に動き、かつチーム全体が一体となって相乗効果を生み出せるようにする力
③関係力(関係/Relation)
メンバーの創造的な対話により、やる気と能力を引き出し、チームを活性化する力
チームビルディングは、この3つの要素をバランス伸ばしていく取り組みです。

チームビルディングが必要とされる背景
現代はVUCA(ブーカ)の時代と言われています。
VUCAとは、Volatility(変動性)、Uncertainty(不確実性)、Complexity(複雑性)、Ambiguity(曖昧性)の頭文字をとった造語で、社会やビジネス環境が複雑化し、将来の予測が困難な状況を意味します。
そのようなビジネス環境の中で、組織が直面する課題は複雑化し、簡単に解決することができなくなりました。
企業がビジョンや経営目標を実現するには、複雑に絡んだ問題を多角的に捉え、解決に導く力が組織に求められるようになりました。
組織に属するメンバ-それぞれの強みを最大限発揮し、課題を解決する組織を創るチームビルディングが求められています。
チームビルディングの効果
生産性の向上
企業規模が大きくなってくると、個々の役割やプロジェクトごとに情報が属人化するようになり、チーム内でのコミュニケーションが不足しがちです。
また、部門が異なると、部門ごとの目標やスケジュールの違いにより、部門間での意思疎通が不足していると部門間で対立が起こります。
チームビルディングにより、個人間、部門間の目標や情報が共有されることで、業務の進行スピードが向上するだけでなく、重複作業やミスが減少します。
また、メンバー各自の役割や進捗状況が分かりやすくなるため、効率的に仕事を進めるようになります。
チームビルディングに取組むと、個人がチームの中で自分の強みを活かし、他のメンバーの弱みを補うことを意識して働くようになります。
これらの効果から、組織全体の生産性が向上します。
従業員のエンゲージメントの向上
チームビルディングは、人の強みを活かす取り組みです。
調査から、組織が人の強みに着目するだけで、エンゲージメントが大幅に向上することが分かっています。
チームビルディングでコミュニケーションが改善すると、従業員は「自分の意見が尊重されている」と感じることができるため、会社に対する信頼や愛着が深まります。
チームビルディングによって、組織の目標のなかで個人の役割や責任が明確化されるので、「自分が組織の役に立っている」と感じることができるため、エンゲージメントが向上します。
リーダーシップ向上を通じたリーダーの育成
リーダーシップとは、組織の中でチームに与える影響力の強さのことです。
チームビルディングに取組むと、リーダーは自らの強みの活かし方を学び、自分の強みを活かして影響力を行使する力が高まります。
また、部下への仕事の任せ方や、部下の能力を引き出すコミュニケーションを身につけます。
結果として、その人の強みを活かしたマネジメント能力が高まり、リーダーを育成することができます。
中小企業がチームビルディングを行うための具体的な方法
チームビルディングを行うポイント
チームビルディングは、経営目標を達成する組織づくりを行うために行います。
チームビルディングというと、ワークショップなどの研修を意識すると思いますが、目的もなくワークショップを行ってもチームビルディングはできません。
チームの力のうち、どこが弱いのかを把握して、それを補う継続的な取り組みを行って初めて、経営目標を達成できる組織ができるのです。
チームビルディングSSR理論では、組織の力を「人材力/Strength」「組織力/Structure」「関係力/Relation」の3つの要素に分類し、この3つの要素をバランスよく満たしていくことが重要と考えています。
3つの要素には、それぞれレベルがあり、いきなり上位のレベルを満たしにいっても、土台がしっかりしていないため、その打ち手は効果がありません。
組織のレベルは、「個人」、「チーム」「会社全体」の階層レベルに区分され、それぞれが「人材力」「組織力」「関係力」と有機的に結びついており、それぞれの結びつきが強化されると組織の実力が上がっていくのです。

例えば、社員が会社の理念や仕事に意義を感じていても、社員同士が信頼できていなければ、離職の多い職場なのは変わりません。
中小企業では、学習の機会が限られているため、1階層の取組ができている企業も多くありません。
中小企業が成果を出す近道は、1階層から順に取り組んでいくことです。
中小企業がチームビルディングに取組むうえで、おすすめの取組を3つご紹介します。
何から始めて良いか分からない場合は、この3つの順で取り組みましょう。
人と人の違いを学び、強みを活かす方法を身につける(人材力)
調査会社ギャラップの調査によると、経営層が「強みに着目する」という意識を持つだけで、組織の生産性やエンゲージメントが向上することが分かっています。
近年、ダイバーシティ&インクルージョンという概念が広まっているのも、チームの生産性を上げるためには、メンバーの強みの違いを理解し、弱みを補いあえるような関係を築くことが重要ということが分かってきたからです。
さらには、ニューロダイバーシティといわれるような、脳や神経に由来する個人レベルでさまざまな特性の違いを多様性と捉えて相互に尊重し、仕事に活かしていこうという考え方も広がってきています。
チームビルディングSSR理論でも、人材力で最初に整えるのは、自分やメンバーの脳の特性の違いが、仕事にどう影響を及ぼすか学ぶことです。
メンバーの脳の特性を理解する効果を簡単にまとめると次のものなどが挙げられます。
・適所適材:自らの脳の特性を識り、他のメンバーとの違いを理解すれば、チームのメンバーがどの場面で活躍できるか分かります。
・リーダーシップ:自らの強みをどのように使えば良いか分かるため、リーダーシップが磨かれます。
・心理的安全性の向上:人と人が違うことが当たり前と知ることが、心理的安全性の大前提です。
・創造的コミュニケーション:物事の捉え方の違いが理解できるため、創造的な対話によるコミュニケーションが可能になります。
私たちは、『効き脳診断』という脳の特性診断ツールを使って、人材力を高めています。

『効き脳診断』について詳しくはこちら
OKRを導入する(組織力)
チームビルディングSSR理論の組織力は、会社のビジョンと、そこで期待されるチームの目的や目標、そこから導かれる個人の目標の接点をしっかりつくったうえで、メンバー1人ひとりが主体的に動き、かつチーム全体が一体となって相乗効果を生み出せるようにする力ですが、OKRはそれを体現するフレームワークです。
OKRは、GoogleやFacebook、メルカリをはじめ、多くの企業で採用されており、会社のビジョンに紐づいた目標を、社員全員で共有しています。
OKRとは、「Objectives and Key Results(目標と主要な結果)」の略称です。
「目標(Objectives 以下O)」と、その達成度を測る「主要な成果(Key Results以下KR)」を設定して、企業が目指すべき目標⇔チームに求める目標⇔個人一人ひとりの目標をツリー状にリンクさせることにより、会社の目標と個人の目標のベクトルをそろえます。
OKRを導入して高い目標を設定すれば、社員が育ち、部門間の協力体制が進みます。
組織の目標が個人の目標に紐づいているため、会社のビジョンが浸透します。
個人の働きが、会社やチームの役に立っていることが分かるのでエンゲージメントが向上します。
高い目標を設定して挑戦するほうが、結果として成果が高いことが調査からも分かっています。
OKRを導入して、チームの組織力を高めましょう。

中小企業のOKR導入について詳しくはこちらをご覧ください
コーチングを学び1on1ミーティングを導入する(関係力)
1on1ミーティングは、上司が部下の成長や目標達成を支援する部下との面談です。
多くの中小企業で導入されている1on1ミーティングに必要なのは、コーチングのスキルです。
コーチングスキルが不足していると、上司が自らのアドバイスを押し付けてしまったり、通常の業務の進捗確認に終始したりと、部下の成長や目標達成する支援を行えません。
1on1ミーティングでは、部下が設定した目標の達成を上司が支援するため、上司の役割は部下の成長や課題解決を適切に支援することです。
1on1ミーティングを継続的に行うと、上司と部下の信頼関係が向上し、部下の成長を支援することができるようになります。
また、上司と部下との双方向コミュニケーションで、チームの問題解決力も向上します。
1on1ミーティングに必要なコーチングスキルとして、「傾聴」「承認」「質問のスキル」「フィードバック」「ティーチング」「アサーション」などのスキルが挙げられます。
1on1に必要なスキルを教育し、効果的な1on1を行いましょう。

1on1について詳しくはこちらもご覧ください
チームビルディングを行ううえでの注意点
タックマンモデルを意識する

タックマンモデルとは、組織の成長段階を示すモデルです。
チームが結成された後、対立などの混乱期を経て、チームがだんだん機能していく様を5つの発展段階に分けて説明しています。
その5つとは、形成期・混乱期・統一期・機能期・散会期です。
タックマンモデルを知ることで、チームの状態に応じて正しい対策を行うことができるようになります。
形成期(Forming)
形成期は、チームが新たに結成された段階です。
メンバーがお互いのスキルや価値観を十分理解しておらず、チームの目標や役割に対する理解も浅いため、メンバーの中には不安や緊張感が生じます。
踏み込んだコミュニケーションが起こらないため、チームとして目標に向かって活動はできていません。
リーダーは、チームの方向性を明確にし、チーム全体の成功イメージの共有を図りながら、メンバーの目標達成に向けた動機づけを促進します。
混乱期(Storming)
チームの目標が共有されてくると、チームは目標達成に向けて活動を始めます。
しかし、メンバーの業務の進め方や価値観が異なるため、なかなかうまくいきません。
上手くいかないと犯人探しが始まるなど、チーム内に軋轢や衝突が起こります。
そうすると、チームの雰囲気がどんどん悪くなっていきます。
こんなとき、リーダーに必要なことは、メンバーを信頼して、チーム成功の全体ビジョンを示し続けることです。
統一期(Norming)
混乱期にお互いが意見をぶつけ合っていくうちに、だんだんお互いのことが分かってきます。
チームの目標や成功ビジョンの共有も進んでいくため、その目標に対するメンバーの役割分担が明確になってきます。
メンバーの信頼関係が深まり、目標達成に向けて対話ができるようになり、チーム全体の生産性が向上します。
業務の進捗スピードが上がるため、リーダーは、チームが目標達成に向けて正しく進んでいるか確認し、早期に軌道修正する役割が求められます。
機能期(Performing)
機能期は、チームが成熟し、各メンバーが自己の役割を把握し、他のメンバーと協力して成果をあげていく時期です。
この段階になると、メンバーはお互いの個性を尊重しながら相乗効果を発揮するように行動するようになります。
チームの目標達成が見えてくるので、ますますモチベーションが上がります。
リーダーが果たす役割は、相対的に低くなります。
散会期(Adjourning)
散会期は、一定期間の到達や目標の達成によってチームが解散する時期のことです。
これまでの経験を通じて、メンバーそれぞれがスキルや強みを見つけて、次のステージに進むタイミングとなります。
散会期には、これまでの成果と評価の確認を行い、次のキャリアで活かせるようにします。
リーダーは、メンバーに対してフィードバックを行うことで、部下の学習を促進します。
経営者も変わる必要がある
チームビルディングは組織のマネジメントを変える取組です。
つまり、組織のソフトウェアのアップデートです。
しかし、どれだけ性能の素晴らしいソフトウェアを導入しても、CPUやメモリが旧式だと性能を十分引き出せないのと同じように、チームビルディングを導入して組織の働き方が変わっても、経営者層が変わらなければ成果が上がらないだけでなく、社員満足度の低下など社内の混乱につながります。
従業員の働き方を変えるためには、自らのマネジメントもそれに合わせてアップデートする必要があります。
チームのレベルに応じた取り組みをする
先にも述べましたが、チームの3つの力(SSR)のうち、どこが弱いのかを把握して、それを補う継続的な取り組みを行わないと、チームビルディングの取組はうまくいきません。
チームビルディングSSR理論の3つの要素には、それぞれレベルがあり、いきなり上位のレベルを満たしにいっても、土台がしっかりしていないため、その打ち手は効果があがりません。
組織のレベルは、「個人」、「チーム」「会社全体」の階層レベルに区分され、それぞれが「人材力」「組織力」「関係力」と有機的に結びついており、それぞれの結びつきが強化されると組織の実力が上がっていくのです。
どの階層レベルの、どの要素が弱いのかを把握してチームビルディングに取組む必要があります。
組織の力の現状を調査して、組織改善に活かす手法として『サーベイ・フィードバック』があります。
組織の現状を正しく把握して、効果的な打ち手をうちましょう。
従業員一人ひとりに組織理論に基づいた調査を行い、組織の現状を把握するのが、組織診断『ソコアゲ』です。
組織診断『ソコアゲ』について詳しくはこちらもご覧ください。
ゲームを活用したチービルディング研修例
チームビルディングを学ぶために様々な研修がありますが、中小企業が研修を実施する場合には、ゲームを使った研修が効果的です。
ゲームによってチームの課題が明確になるため、参加者が自然と主体的に学ぶことができます。
ゲームを使った研修には、
・参加者が自然と主体性を発揮して学ぶため、研修効果が持続しやすい。
・同じゲームでも、チームのレベルやテーマ別に研修ができる。
・周りと協力しないとゴールできないため、自然とチームビルディングが学べる。
といった効果があります。
ここでは、チームビルディング研修に最適なゲームについて、簡単なルールと狙い・効果を解説します。
ヘリウムリング
ルール
ヘリウムリングは、チームメンバー全員でそれぞれ指1本でフラフープを運ぶシンプルなゲームです。
スタート地点に置かれたフープを持ち上げて、ゴール地点まで運ぶ時間を争います。
ただし、ゲーム上次の制限が課されます。
・持ち上げる際は全員が指1本で下から持ち上げる。
・持ち上げるときは、指の腹ではなく指の背を使う。
・誰か一人でもフープから指が離れたたらスタート地点に戻る。
狙い・効果
老若男女どんな人でも気軽に参加できるゲームで、チーム全体のまとまり度合、一体感が試されます。
チームビルディングができていないチームは、犯人捜しが始まったり、声の大きい人が一方的に仕切ってやり方をコロコロと変えるため、一向に先に進まないということが起こります。
一方、チームビルディングが進んでいるチームは、「次はこうしてみよう!」と、みんなで意見を出し合いながらゲームに挑んでいきます。
こういった過程を体験することで、成果を出せるチームはどういうチームかを実感できるようになっています。
最後に振り返りシートを使って話し合いを行います。
振り返りをすることで、チームで成果をだすために日頃どんなことを意識する必要があるかを自分たちで考え、翌日からの仕事につなげられるようになります。
効き脳研修「旅のしおり」
ルール
事前に脳の特性診断『効き脳診断』を行ったうえで、特性が同じグループで固まって着席します。
そのうえで、簡単な「旅のしおり」を作ってもらいます。
自分が貰って嬉しい旅のしおりを作るという制限を設けます。
狙い・効果
同じ指示書により作業をしたにも関わらず、各テーブルの制作物が大幅に異なります。
各テーブルでどのような傾向の旅のしおりが制作されるか全体で共有することで、効き脳の違いによる行動の違いに気づき、その後の学習効果が高まります。
メンバーの違いを知り、仕事の任せ方を考えるワークを通じ、エンゲージメントの向上や適所適材を図れるようになります。
チームビルディング中学校
ルール
チームビルディング中学校は、チームで協力して正解を導くカードゲームです。
メンバーそれぞれに別の情報が記載された情報カードが渡され、それぞれの情報を共有してゴールに導きます。
狙い・効果
ゲームをクリアできたか否かに関わらず、チームの強みと課題が可視化されます。
例えば、
・チームで協力せず、ひとりで正解を導こうとする。
・アイデアを思いついているのに言わない。
・チーム全体が役割分担せず、同じ作業をしている。
といった課題が、ゲームを通じて浮き彫りになります。
最後に振り返りシートを使って振り返りを行うことで、その課題をメンバー全員が他人事ではなく、自分事として捉えるようになり、チームの行動の改善につながります。
研修を通じて、リーダーシップの向上や、部署間を超えたコミュニケーションの重要性を学びます。
部長ゲーム
ルール
部長ゲームは、それぞれの役割に与えられた指示書に従って答えを導き出すゲームです。
誰がどのような情報を持っているかを、ルールに従って情報を共有し、指示書に示された課題を時間内にクリアすることを目指します。
ゲームには次のルールが適用されます。
・ゲーム中は会話禁止
・コミュニケーションは「伝達用紙」のみ。
・情報の伝達は直接の上司・部下のみ可能。
狙い・効果
会社の指示系統と同じシチュエーションを再現してコミュニケーションを取るゲームを通じて、日常の仕事の報連相の仕方や、仕事への取り組み方が可視化できるようになっています。
そのため、普段の仕事の進め方や課題が明確になります。
それらの課題をどうすれば解決できるのか、振り返りの時間を使って話し合うことで、コミュニケーションの改善やリーダーシップ向上が図れます。
その他のゲーム研修
チームビルディングを学ぶゲーム研修は、ここまで紹介した以外にも様々な内容の研修があります。
そのほかの研修について詳しくはこちらもご参照ください。
ここまで紹介したゲーム研修についてもより詳しく説明がされています。
まとめ
チームビルディングは強みを活かし、経営目標を達成する組織を創る取り組みです。
チームビルディングを行うポイントは、SSR理論を意識して、弱いところを補うような打ち手を打つことです。
中小企業の場合は、人と人の違いを『効き脳診断』等を通じて理解し、OKRで会社の目標と個人の目標を繋げたうえで、上司が1on1で部下の成長と課題解決を支援する取り組みを始めることで、チームビルディングが行えます。
OKRの高い目標(組織力)を目指して、上司が部下に適所適材で仕事を割り振り(人材力)、部下の課題に対して1on1で成長と課題解決を支援していきます(関係力)。
中小企業では、マネジメント研修が不足していることも多いため、必要なチームマネジメント研修を行い、マネジメントスキルを同時に向上させましょう。
チームビルディングに関する取組や教育を通じて、組織の目標を達成するために、人の違いを活かすことを意識してコミュニケーションを取っていけば、心理的安全性の高い組織を創ることができます。
組織共通の目標に対して、言うべきことを言える組織が、成果をあげることができるのです。
中小企業におけるOKRの導入とその効果|OKRの中小企業への導入は山内経営会計事務所
OKRとは

OKRの基本概念
OKRとは、「Objectives and Key Results(目標と主要な結果)」の略称です。
「達成目標(Objectives 以下O)」と
その達成度を測る「主要な成果(Key Results以下KR)」を設定して、
企業が目指すべき目標と社員一人ひとりの目標をリンクさせることにより、
すべての社員が一丸となって同じ方向を向いて重要課題に取り組みます。
OKRのObjectiveは、組織がどのような状態になっている必要があるのかを表したもので、
基本的には定性的な目標が推奨されています。
OKRでは、基本的に60%~70%の達成でよしとするチャレンジ目標を立てることが推奨されます。
このような目標を「ムーンショット目標」と言います。
Objectiveにどのように近づいているか、
という達成状況を測るための主要成果がKey Resultsです。
達成状況を測るための指標であるため、
Kは定量的なものとすることが推奨されます。
OKRは、会社の重要課題を解決する目標に全員で挑む取組ですが、
OKRイベントで頻繁にKRの達成度合いをチェック・修正するしくみを運用しながら、
組織全体の目標の達成と社員の成長を同時に目指す組織マネジメントです。

OKRの歴史と導入企業
目標管理の方法として、MBOやKPIなど様々な方法がありますが、
これらは主に現状の先にある未来を実現するのに適した目標管理制度です。
しかし、複雑で変化のスピードが早い現在では、
これまでの目標管理制度が上手く機能しないことが増えてきました。
そのような状況の中で創造性を発揮し、短期間で新しい変化を生み出す目標管理制度の必要性が生じてきたためにOKRが生まれました。
OKRは主要市場でライバル社に押され、存亡の危機にあったインテルで生まれました。
従業員の半分を動員したOKRで、
シェアを劇的に回復し、市場を制することができました。
当時インテルで働いていたジョン・ドーアが、
Googleに乞われてOKRの導入を行い、
以降、GoogleのマネジメントはOKRで行われています。
日本でも、メルカリ、ユーザーベース、日立製作所などがOKRを導入しています。
中小企業がOKRを導入するメリット

効果が出るスピードが速い
企業規模が大きくなると、
OKRの階層が5以上になったり、適切な目標を立てる難易度があがります。
一方で、中小企業では多くの場合OKRは3階層までです。
OKR設定や教育にかける時間も少なくて済むため、導入スピードは速くなります。
また、これまでマネジメントに取組んでこなかった企業では、
OKRに取り組むことで大きな成果が上がることが期待されます。
目標を起点にビジョンが浸透する
OKRでは、会社のビジョンに対する現状の課題を解決する目標を設定します。
個人の目標も、会社のミッションやビジョンに紐づけて設定するため、
結果としてビジョンが浸透します。
中小企業では、
そもそも仕事の目標が共有されていることも多くないため、
チームで適切な目標を設定し、共有することが、競争力の強化につながります。
部門間が協力しやすくなる
OKRは、会社のビジョンに紐づいた目標を、社員全員が共有するしくみです。
OKRを導入すると、会社全体の目標の達成に向かって、
自分の部署だけでなく、他の部署の目標も意識するようになります。
結果として、部門間協力が自然とできるようになります。
生産性の向上
中小企業では、全社員が共通の目標を追うというマネジメントを行っている企業は多くありません。
適切な目標に集中して仕事をすると、一人一人の生産性は向上します。
OKRを導入し、継続的に評価・運用を続けると、
PDCAサイクルが回るようになり、改善活動を通じて生産性が向上します。
社員育成ができる
OKRを導入すると、会社の目標達成に向けて、
従業員は普段はやらないことをやる必要に迫られます。
また、チームの目標や個人の目標が明確になるため、
各人に当事者意識が芽生えます。
当事者意識をもって、普段やらない新しいことに挑戦することが、
従業員の成長につながります。
管理職(リーダー)は、OKRの運用を通じてマネジメント能力が向上します。
中小企業のOKR導入事例

事例1:従業員が20名の建設業
OKRは2層目まで全従業員参加で作成。
2週間に1回、ウィンセッションとチェックインを併せたミーティングを開催。
ミーティングは、KRの進捗と達成したことを共有。
OKRオーナーが進捗や取り組みに対してフィードバックを行う。
事例2:従業員170名の食品・エネルギー関連事業
当初6カ月はOKRの知識を含めたマネジメント研修を行う。
全社~個人まで、5階層のOKRを設定。
運用は部門・各課で、運用しやすいように設計。
その過程で、不要な会議などはOKRイベントに統合した。
OKR設定のポイント

OKRでは、「達成目標(Objectives 以下O)」と
その達成度を測る「主要な成果(Key Results以下KR)」を3~5つ設定します。
会社全体のOKRを先に設定し、その後に部のOKR、課のOKRというようにツリー状に設定します。
中小企業では、一般的にOKRの設定は3層までです。
それぞれのOKRはつながっており、全体として全社OKRを実現できるような目標を設定します。
O(目標) 設定のポイント
まずは、目標を定めます。
OKRの目標は明確かつ定性的な目標であることが推奨されています。
定性的とは、数字では表せない理想の状態のこと。
できれば、メンバーがわくわくできるような表現になっていることが理想です。
また、少し達成が難しいくらいのムーンショット目標を設定することが推奨されています。
ムーンショット目標は60%~70%の達成が予想される少しチャレンジングな目標です。
ムーンショット目標を設定したほうが、メンバーのモチベーションが高まり、成果が上がることが分かっています。
KR(主要な結果)設定のポイント
Oが決まったら、KRを設定します。
KRは、Oの達成度合いを測るための定量的な指標です。
定量的とは、数字で表せる性質をもつ指標です。
1つのOに対して様々な視点から、そのOを達成するKRを3~5つ設定します。
KRはSMAREの法則を意識して設定しましょう。
OKRのSMART

SMARTの法則では、Aは達成可能な目標(Attainable)ですが、
OKRにおいては、AはAmbitiousに変更して設定することが推奨されます。
1.具体的であるか(Specific)
明確で、「5W1H」がクリアになっていること。
2.測定可能であるか(Measurable)
量で測れること。検証が可能であること。
検証可能であるからこそ、必要に応じて目標の修正が可能です。
3.野心的か(Ambitious)
60~70%達成で十分な、野心的な目標であること。
4.目的に沿っているか(Relevant)
戦略実現の目的に合った目標であること。
自分が所属する部署の目標、会社の戦略・方針に合っているかを確認します。
5.具体的な期間か(Time-bound)
達成期間が限定され、期間が決まっていること。
中小企業のOKR導入手順と必要な準備

初期準備と計画
初期準備
OKRは、会社のビジョンに合わせて個人目標を設定していくため、
会社のなかでミッション・ビジョン・バリューといった経営理念が共有されていないと、
全体として繋がった目標を立てることが難しくなります。
中小企業は経営理念をしっかり定めていない企業も多いため、OKR導入前に経営理念を策定しましょう。
また、何のためにOKRを導入するのかという目的が明確でないと、
下層に進むにつれて目標の粒度がバラバラになり、全体が繋がった目標を立てることが難しくなります。
全従業員に伝わるように、OKR導入目的を明確にしましょう。
また、OKR開始までにOKR運用マニュアルを作成しておくと、
初期からPDCAサイクルがまわるようになるため、OKRマニュアルを作成しましょう。
計画
まず、一部門だけ導入するのか、それとも全社で一気に導入するのか。
チームのOKRにとどめるのか、個人個人までOKRを設定するのか。
OKRの導入範囲を決定します。
次に、OKR推進チームを決定し、OKR推進チームがOKR導入計画を策定します。
また、OKR推進チームは、OKRマニュアルを作成します。
初めてのOKR設定
初めてOKRに取り組む場合は、
多くても2層目OKRまでの設定にとどめます。
目標管理に慣れていない中小企業では、
最初からOKRを全社へ展開することはあまりオススメできません。
限られた部署・メンバーがOKRパイロットチームとなって、
3か月間学びながら取り組んでみることが重要です。
まずは、まずは、経営トップが全社OKRを設定し
次にパイロットチームが2層目OKRの設定をします。
OKRの運用と評価
OKRの設定が終わったら、パイロットチームがOKRマニュアルに沿って運用を行います。
OKR推進チームは、パイロットチームのOKR運用を支援するとともに、定期的にフィードバックをもらい、その対応を決めていきます。
最初のOKR運用期間(3カ月)が終わったらOKR結果レビューを行います。
KRの達成度を確定して、目標との差を次のOKRに活かします。
また、OKR運用改善ミーティングでOKRの運用を振り返り、効果的な運営できるようOKR推進チームに報告します。
OKR推進チームは、パイロットチームからもたらされたフィードバックを活かしOKRマニュアルを改定していきます。
全社展開
OKRパイロットチームの経験を活かして、OKR運用イベントと既存の会議体との調整や統合を行います。
重複するイベントなどを無くして、無駄を省きます。
管理職がOKR運用イベントを効果的に運用できるよう、必要に応じて管理職マネジメント研修を行います。
全社展開の準備が整ったら、全社に向けてOKR導入の目的や、OKRの設定を行うキックオフイベントを行います。
運用イベントはチームの状況に合わせた形で行うことを許しながらも、必ず行うことを徹底します。
全社で運用記録を残すことで、少しずつ改善することを徹底します。
OKR導入の注意点

OKRは新しい組織マネジメントですので、導入時はうまくできないこともあります。
導入時に気を付けるポイントを紹介します。
目標が適切でない。
OKRが効果を発揮するためには、目標が組織全体で適切になっている必要があります。
しかし、日本の中小企業の中には、まだ目標管理を取り入れていない企業もあります。
そういった企業では、どのような目標を立てれば良いか分からないという課題があります。
また、OKRを設定していくと、
・Oの設定は得意だけど、KRの設定が苦手な人。
・KRの設定は得意だけど、Oの設定が苦手な人
・全く目標が書けない人
など、すべての人が適切な目標を設定できる訳ではありません。
さらに、日本では目標達成率が100%であることが評価される傾向があります。
OKRは達成率が70%〜80%程度を前提とした挑戦的な目標設定を求めるのですが、
「達成できない目標」を掲げることに対する抵抗感から、失敗を恐れて挑戦的な目標を避ける傾向があります。
適切な目標を立てるには
うまく目標が立てられないのは、人にはそれぞれ強みに違いがあるからです。
強みに違いがあるので、全体として適切なOKRの設定はなかなかできません。
そういった場合は、チーム全体で強みを活かす必要があります。
チーム全体で目標を立てれば、より適切な目標が設定できるようになります。
チームの強みの活かし方はこちらもご覧ください。
挑戦的な目標を立てることに対して抵抗感を感じるメンバーが多い場合は、
まずは必達目標を掲げることも考えましょう。
OKRが漠然としていたり、
全社OKRに対して適切でない部門等OKRも散見されます。
そういった場合は、そのチームの上層のチームや、
他の部署のOKRを見たり、相談しながら、
タテ・ヨコから見て適切な目標を立てましょう。
社内コミュニケーションの改善
OKRは、組織マネジメントのフレームワークです。
OKRを機能させるためには、フレームワークの教科書通りに運用する必要がありますが、
今まで1on1や、チームミーティングといった、
マネジメントに必要なコミュニケーションができていない場合には、
コミュニケーションの質・量の両面で改善が必要です。
コミュニケーションを改善させるには
OKRをうまく機能させるためには、
すべてのリーダーにポジティブアプローチの意識や、
コーチング、ティーチングのスキルが必要です。
スキルが身についていない場合は、
社内研修などを行って、OKRに必要なコミュニケーションスキルを身につけましょう。
継続的な改善
OKRは、日本人にとって新たなマネジメントです。
中小企業が初めからOKRをうまく設定して、完璧に運用できることはありません。
目標の設定やコミュニケーションだけでなく、
運用方法も新たに設計していかねばなりません。
継続的にOKRの改善を行いましょう。
継続な改善を行うには
OKR運用イベントの運用改善ミーティングやOKR評価レビューを必ず行いましょう。
効果的にOKRを運用しているチームのやり方などを全社に共有するなど、自社に合った運用へと改善していきましょう。
人事評価との関係
OKRはチャレンジ目標を推奨しているため、
既存の目標管理・評価制度と結合させようとするとOKRの効果を十分に発揮できません。
そのため、OKRを人事評価と密に結合させないことが推奨されます。
しかし、OKRを一部人事評価の評価対象としている企業もあります。
OKRを人事評価に反映している企業例
中小企業でOKRを人事評価に影響させている企業は稀ですが、OKRを人事評価に一部反映している企業を紹介します。
・マネーフォワード
事業目標に基づく予算目標は100%達成を求めるが、100%達成を前提としないムーンショット目標の設定を織り交ぜて設定しています。
目標達成度そのものではなく、目標に対するアウトプット内容を人事評価の検討材料に加えています。
・ユーザーベース
70%の達成でも許容する「ストレッチ目標」と100%の達成が求められる「コミットメント目標」のどちらかをチーム内で合意し、選択して目標を設定しています。
ジョブ型雇用を採用しており、OKRの達成度はジョブグレードの決定に影響を及ぼしているが、OKRの達成度が処遇のすべてを決定しているわけではない。
まとめ

OKRは、企業が目指すべき目標と社員一人ひとりの目標をリンクさせることにより、
すべての社員が一丸となって同じ方向を向いて重要課題に取り組む組織マネジメントです。
中小企業のOKR導入には様々なメリットがありますが、中小企業に導入するにはリソース不足を始めとする様々な課題もあります。
正しいOKRの設定ポイントや導入手順を守りながら、注意点を意識してOKRの導入を進めましょう。
心理的安全性の高め方|具体的な取組みや注意するポイントを解説します。
心理的安全性とは

心理的安全性とは、
ハーバード大学で組織行動学を研究する
エイミー・C・エドモンドソン教授が1999年に提唱した
「psychological safety(サイコロジカル・セーフティ)」の日本語訳です。
エドモンドソン教授は、この心理的安全性を
「チームメンバーが恐怖や不安を感じずに自由に発言したり、行動できる状態」
と定義しています。
心理的安全性が高い組織では、
安心して発言できる文化が出来ているため、
現場の問題解決力が高くなり、
チームの生産性が高まります。
心理的安全性が注目されるようになったのは
次の二つの理由があります。
心理的安全性が注目される背景

心理的安全性が求められる時代背景
現代の経営をとりまく外部環境は、
俗にVUCAの時代と言われるように
時代の変化のスピードが速く、
ものごとが複雑で不確実な時代です。
また、内部環境も、
グローバル化の進展で
様々な国籍や文化の人と働く機会が多くなっています。
さらに、
Z世代と旧世代の価値観の違いが浮き彫りになり、
コロナ禍以降のテレワークの対応など
これまで日本で成功してきたコミュニケーションでは
成果を上げることが難しくなっています。
Google社の研究発表
心理的安全性が注目されるきっかけとなったのが、
Googleが、パフォーマンスの高いチームについて、
「プロジェクト・アリストテレス」という研究を行い、
その結果が大々的に報道されたことです。
Googleの研究により、
高いパフォーマンスを発揮しているチームは
以下の5つの要件を
満たしていることが報告されたのです。
①心理的安全性
「無知、無能、ネガティブ、邪魔だ
と思われる可能性のある行動をしても、
このチームなら大丈夫だ」と信じられる状態https://rework.withgoogle.com/jp/guides/understanding-team-effectiveness#identify-dynamics-of-effective-teams
変わったアイデアも否定されることがなく、
失敗があった場合でも建設的に乗り越えられる。
②相互信頼
メンバーの能力を信頼している状態
そのため、問題が起きたときは
「ヒト」ではなく「しくみ」を責める。
③構造と明確さ
会社の目標から求められる
チームの目的・目標・計画が明確で、
個人の役割がチーム内で共有されている。
④仕事の意味
メンバーが、
自分にとって意味がある仕事を
選択できていると感じている。
⑤インパクト
会社の目標や社会に対して、
意義のある仕事をしていると思える。
実感を得るためには、
自分の仕事が組織の目標達成に貢献していることを、
把握できるしくみが必要。

最終的にプロジェクト・アリストテレスは、
上記5つの要因が機能する土台となるのが、
①の心理的安全性であると結論付けました。
因みに、アリストテレスは、
古代ギリシャの哲学者で、
「全体は部分の総和に勝る」
という言葉を遺しています。
Googleは、
「仕事はチームでしたほうがパフォーマンスが高い」
と考えている様子がうかがえます。
この研究報告が知れ渡るにつれ、
心理的安全性が
多くの企業から注目されるようになりました。
日本で心理的安全性が課題となる理由

日本人の性質
心理的安全性はアメリカ発の概念であり、
これからの時代に目指すべき組織概念です。
しかし、
この概念をそのまま日本で導入しても
うまく行かないことがあります。
日本は一般的に
同調圧力の高い社会性を有していると言われます。
義務教育段階から、
集団行動を取る訓練を積み重ね、
協調できない子は問題児扱いされてきました。
すこし前にはKY(空気読めない)
という言葉が流行語になったこともあります。
日本では、
全てを表現せず、
奥ゆかしさを残した所作が美しいとされてきたこともあり、
相手の気持ちを推し量ったり、
周りと異なった行動をしないことが重視されてきました。
組織においてもそれは同じで、
「あうんの呼吸」や
「出る杭は打たれる」という言葉が象徴するように、
同調圧力からはみ出るような言動は、
組織のなかでは敬遠されてきました。
組織の心理的安全性を高めるためには、
「出る杭がどんどん出る」組織文化を育む必要があります。
そのために重要なのが、
個人の才能の違いを正しく把握することです。
才能の違いを正しく把握するためには、
特性診断を行う必要があるのですが、
日本の組織では、
特性診断を行っているのは、
大企業を中心に一部の企業に限られています。
心理的安全性を高めに行くから上手くいかない
心理的安全性は概念的なものであるため、
具体的に何から取りかかれば良いか分からない。
という難しさがあります。
そもそも、心理的安全性が高い組織というと、
仲が良いチームと誤解されることが良くあります。
チームで仕事をする上で
相手との信頼関係を損なわないことは重要ですが、
心理的安全性を誤解している「快適なチーム」では、
お互いの顔色をうかがって失敗やミスがあっても指摘せず、
重要な会議でも発言しない(出る杭にならない)
といったことが起こります。
そういった組織文化を持つ企業は、
時代の変化に対応できずに、
徐々に衰退していきます。
なぜ心理的安全性を高めるかといえば
変化の速い時代の中で企業が成長していくために、
現場の生産性を高めるためです。
現場の生産性を高めるためには、
現場に高い目標や、
その目標を実現する責任を課す必要があります。
チームのメンバーの目標や役割が明確になっており、
チームの目標を達成するために、
言うべきことを言うから、
否定も排除もされないのです。

次に、
心理的安全性が概念的なものであるがゆえに、
具体的に何から手をつけたら良いか分からない
という難しさがあります。
高い目標を達成するためには、
会社全体の目標に対するチームの役割や目標が明確で、
チームのメンバーがお互いを信頼して仕事を任せる必要があります。
また、高い目標を目指せば自ずと、
仕事に対する意義を感じることができます。
仕事に求める欲求は人それぞれですが、
それぞれの違いを認める組織でなければ人は辞めていきます。
これらの因子のベースとなると言われているのが、
心理的安全性という概念です。

心理的安全性を高めるポイント
心理的安全性を高めるうえで着目すべきは、
効果的なチームの5因子がどのレベルにあるか?
を診ることです。
前述のとおり心理的安全性は、
効果的なチームの他の4因子の必要十分条件です。
逆説的に捉えると、
他の4因子が高いレベルにあれば、
心理的安全性も高いレベルにあると言えます。

心理的安全性という概念を高めようとすると、
何から手をつければよいか分かりにくいですが、
他の4つの因子を高めるための施策であれば、
具体的な取り組みが見えてきます。
心理的安全性を高めるためには、
会社の掲げる高い目標を実現するために、
4つの因子のうち弱いものから順に強化し、
4つの因子すべてを上げていく取り組みが必要です。
心理的安全性を高めるための具体的な取組み

Googleが心理的安全性を高めるために取組んでいること。
Google社では、最高の上司を、
「自分で成果を上げるのではなく、
部下が最大の成果を上げるための場づくりができる人材」
と定めています。
そのような上司をつくるために、
次のようなしくみを導入しています。
・独自の組織サーベイを行う
・パフォーマンスを最大限発揮させるために個人診断を行う。
・会社のビジョンや目標と個人を紐づけるOKRを行う
・上司と部下の相互信頼を高める1on1を行う
・賞賛しあう文化をつくるピア・ボーナスを行う
そのしくみの具体的な内容や、
実現を手助けするツールを紹介します。
定期的に組織サーベイを行う
組織サーベイとは、
組織の現状を全体的に把握する広範囲の調査です。
組織サーベイを行って、
相互信頼・構造の明確さ・仕事の意義・インパクトの
4因子のうち弱いものを把握し、
弱いものから改善する取り組みを行っていけば
心理的安全性は高まっていきます。
エドモンドソン教授の質問で調べる
心理的安全性の生みの親であるエドモンドソン教授は、
チームの心理的安全性のレベルを図る7つの質問を考案し、
論文で発表しています。
以下の質問に5段階で点数をつけて、
組織の心理的安全性のレベルを継続的に計測し、
チームの心理的安全性が高まっているかを調べましょう。
1. このチームの中でミスをしたら、たいてい非難される。
2. このチームでは、メンバーがいつでも課題や問題を指摘しあえる。
3. このチームのメンバーは、自分と異なる考え方ややり方を認めない。
4. このチームでは、安心してリスクを取りチャレンジすることができる。
5. このチームでは、他者に助けや支援を求めにくい。
6. このチームには、自分の努力や成果を故意におとしめるような人はいない。
7. このチームで仕事をするとき、
自分のスキルと才能が尊重され、活かされていると感じる。
Googleでは、
専属のリサーチチームが、
リーダーに対して匿名化した集計結果を渡し、
心理的安全性を高めるためのヒントを提供しています。
組織診断「ソコアゲ」で調べる
Googleでは、
心理的安全性の向上の責任を負うのは、
それぞれのチームのリーダーであることがうかがえます。
一方で、一般的な中小企業では、
どこにどのような打ち手をうてば、
心理的安全性に関する課題を解決できるかの
具体的解決策を示せるリーダーは多くありません。
通常の組織サーベイでは、
組織の課題を把握するために行いますが、
その原因や解決方法まで特定できません。
私たちが提供する組織診断「ソコアゲ」は、
「いつ」「どの順番で」「どこの部署に」
「どのような打ち手」を打てば課題が解決できるのか?
を調べることが可能な組織診断です。
組織診断「ソコアゲ」について詳しくはこちら
組織診断「ソコアゲ」で、
定期的に組織の状態を把握し、
そのタイミングに必要な打ち手をうちましょう。
個人の強みを診断し、チームで共有する
日本で心理的安全性が高まらないのは、
個人の特性を正しく把握しないからです。
孫子も
「敵を知り、己を知れば百戦危うからず」
「敵を知らずとも、己を知れば勝負は五分五分」
「敵を知らず、己も知らざれば、戦うごとに必ず危うし」
と言っています。
日本の組織は「毎戦必ず危し」の状態で戦っているのです。
一方、欧米の組織では、
診断により個人の特性を把握することは、
当たり前のように行われています。
当たり前すぎるがゆえに、
海外の組織マネジメントが紹介されるときに、
その取り組みが紹介されていません。
人と人の違いを正しく分かりあえば、
なぜ自分と違う発言をするかの理由が分かります。
人と人の違いを共有して初めて、
メンバーに「相互信頼」が生まれて、
言いたいことを安心して言える文化が育まれるのです。
また、高いパフォーマンスを発揮するためには、
なるべく得意な仕事を任せる必要があります。
得意なことを任せられていると感じられることで、
チームのメンバーは、
「仕事の意味」や「インパクト」を感じることができます。
私たちは、
チームで人と人の違いを把握するのに、
「効き脳診断」という診断を活用しています。
効き脳診断のベースとなっているハーマン・モデルは、
50を超える博士論文でその有効性が確認されています。
ハーマンモデルは欧米の企業を中心に、
すでに200 万人以上の活用実績がありますが、
企業の現場では、
・コミュニケーションの促進・向上
・チームビルディング(創造性開発)
・採用や適材配置
・個人のスキルアップやキャリア開発
・顧客への提案力(営業力)強化
といった目的で活用されています。
効き脳診断についてはこちらもご覧ください。
OKRを導入する
OKRとは、
「Objectives and Key Results(目標と主要な結果)」
の略称です。
人の特性がそれぞれ違うため、
各自がそれぞれの価値観で発言をしたら、
誰かが我慢をする状況が生まれます。
それは、
言いたいことを言い合える状態ではありません。
組織の「目標と計画や、
その中で果たすべき役割が明確」になって、
組織の中に議論の基準ができるのです。
OKRは、
組織のビジョンや目的・目標と、
個人の目標を繋げる組織マネジメントです。
組織のビジョンや目標をベースに対話をするから、
意見が異なる人々がそれぞれの意見をぶつけ合っても、
我慢や否定が起こらないのです。
また、
OKRでは挑戦的な目標を掲げることが推奨されています。
挑戦的な目標に挑むことは、
「失敗を許容する文化」をつくり
メンバーが「自分の仕事に意義がある」
と感じることにつながります。
OKRについて詳しくはこちらもご覧ください。
OKRで必要なコミュニケーションを取る
OKRは、
メンバー1人1人の目標を、
組織のビジョンや目標と紐づけ、
それを組織で実現する組織マネジメントです。
組織で目標を実現するために、
OKRでは次のことに取り組みます。
1on1に取組む
Googleでは、
1on1を2週間に1回行っているようです。
2週間に1回
その期間の業務の振り返りを行い、
次の期間の目標とアクションの確認を行います。
1on1は、
上司が部下の育成や、
モチベーション向上を目的として、
定期的・継続的に行う個人面談です。
1on1という仕組みを継続的に運用することで、
上司と部下の信頼関係を築きながら、
部下が成長して成果を上げることを支援します。
1on1についてくわしくはこちら
コーチングの技術を教育する
人と人は違うので、
それぞれコミュニケーションスタイルが異なります。
それらのメンバーが集まって、
成果を上げるコミュニケーションを取るためには、
共通のコミュニケーションの型を身につける必要があります。
1on1を運用するのに必要なコミュニケーションの型が、
コーチングの技術です。
「お互いが言いたいことを言い合える関係性を築く」
ために学ぶべきコーチングの技術としては、
・傾聴
・承認
・GLOWモデル
・フィードバック
・アサーション
などが挙げられます。
ウィンセッションなどを行う
ウィンセッションは、
OKRのチーム内で成果を確認するだけでなく、
感謝やポジティブな感情を共有して一体感を高めるとともに、
失敗や発見をシェアして、
メンバーの成長を促すOKRイベントです。
一週間の成果や学んだことを言語化することで、
メンバーの成長を支援し、
その過程や努力もねぎらうことで、
「相互信頼」や「仕事の意義」への理解を深めます。
ウィンセッションは、
チームにおいて成果を確認し、
お互いを賞賛するイベントであるが、
チームを超えて感謝の言葉を伝えることができません。
チームや部門を超えて、
感謝の言葉を伝えるために、
Googleではピア・ボーナスを導入しています。
心理的安全性を高める取組の効果

心理的安全性が高まると、
次のような効果が期待できるため、
メンバーの創造的な協業が促進され、
組織のパフォーマンスが向上します。
ミスへの寛容性が高まる
特性診断で各自の得意なこと・苦手なことが分かると、
他者の失敗に対して寛容になります。
また、
OKRが推奨する挑戦的な目標に挑めば、
もともと失敗を織り込んでいるため、
失敗よりも挑戦が賞賛されるとともに、
目標を達成するば大きな成果が得られます。
心理的安全性が高まれば、
離職率が低下し、
高い組織パフォーマンスを維持することができます。
コミュニケーションの改善
人と人の違いを理解していると、
発言の違いが起こる理由が分かるため、
意見の対立は起こりにくくなります。
OKRでチームの目標や役割を共有すれば、
一貫性のあるコミュニケーションを取ることができます。
1on1で継続的に面談を行えば、
上司と部下の信頼関係が増し、
アサーティブな対話を行うことができます。
コーチングの技術を使って対話を行えば、
お互いの違いを活かして創造的な解決策が生まれます。
心理的安全性が高まると、
コミュニケーションの質が向上し、
現場の課題解決力が高まります。
創造性の促進
OKRは現状の延長線上にない、
挑戦的な目標を掲げるので、
創造的なイノベーションを促進する必要があります。
心理的安全性がある環境では、
メンバーは自由にアイデアを出し合うことができるので、
創造的なアイデアで課題を解決するようになります。
メンバーの成長と学習
OKRで高い目標に挑むために、
メンバーには成長が求められます。
継続的な1on1で、
上司は部下の成長と学習を支援します。
心理的安全性が高い環境では、
部下は安心して失敗し、
失敗から学んで成長する機会を得ます。
まとめ

心理的安全性とは、
チームメンバーが恐怖や不安を感じずに、
自由に発言したり、行動できる状態のことを言い、
Googleの調査で、
組織の生産性を高める重要な要素であると分かっています。
アメリカから入ってきた概念なので、
日本の組織で心理的安全性を高めるためには、
今までと異なったマネジメントを取り入れ、
新たに学習をする必要があります。
心理的安全性を高める取り組みを行って、
生産性の高いチームを作ることが、
不確実で変化の速い現代社会で企業が生き残るための
唯一の組織の方針であると言えます。






